■社会問題を対話によって解決しようとする若者たち
私にファシリテーターの依頼をしたのは、実行委員のひとりで、帯広柏葉高校3年の角谷樹環さん。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんに影響を受けて、自らも気候変動に関する活動を帯広で始めた。8月には二酸化炭素排出削減を求めて国内の主要な火力発電事業者を提訴した原告団に加わった。
東京で第1回民主主義ユースフェスティバルに参加した経験が、札幌での開催を目指したという。
「自由に政治家と話せる場所があるんだとすごいワクワクした」「それまで話したことがなかった人、ふだん違う政党を応援したり違う考えを持ったりする人たちが自由に会話をしている状況に感動して、北海道で絶対に開催したいと思いました」
未来のために行動し、社会問題を対話によって解決しようとする若者たちとの出会いは、今回の選挙での大きな収穫だった。

■ヤジ排除訴訟の判決の効力
「高市氏が札幌に来るのでスタンディングします」
10月22日、山口たかさんからメッセージをもらい、私は急きょJR手稲駅北口に向かった。自民党の高市早苗氏は、北海道4区から立候補した中村裕之氏の応援演説のためやってきた。総裁選で中村氏が高市氏を応援した見返りなのだろうか。中村氏は自民党道連会長であるにもかかわらず、立憲民主党候補との接戦が伝えられていた。
私が手稲駅に到着すると、私服の警察官があちこちで警戒にあたり、手荷物や金属探知機の検査が行われていた。物々しい雰囲気の一方で、聴衆は100人あまりと意外と少ない。

山口さんは、2019年に一緒に排除された富永恵子さんらと計5人で最前列に陣取っていた。「政治を変えよう」「憲法改悪反対」「さよならマッチョ政治」と書かれたプラカードや横断幕を手に、静かにアピールしていた。中村氏の街頭演説が始まると、山口さんらの前に「自由民主党青年局」というのぼりを持った男性2人が立った。
「私たちの姿を候補者に見せたくなかったんでしょうか」と山口さん。
だが、街頭演説の現場は2019年とは大きく変わった。手荷物検査で、山口さんらはカバンのなかにあるプラカードをチェックされたが、没収されたり規制されたりすることはなかった。もちろん最前列で掲げても排除されることはなかった。当たり前と言えば当たり前だが、ようやく正常に戻ったようだ。ヤジ排除訴訟での勝訴判決の効力がここでも生きていた。
