「絶対に失敗できない1区」。そして“駅伝男”横手の起用区間は?
高橋監督は、5連勝はあくまでも「大きな目標」だという。「今年は東日本の枠自体が“10”しかないので堅く行きたい」。
今年のニューイヤー駅伝で東日本勢の成績が悪く、各地区の出場枠の調整で、東日本地区が昨年の“12”から減ってしまった。富士通の戦力なら11位以下の心配は要らないが、何が起きるのかわからないのが駅伝である。富士通は19年大会で6区走者にアクシンデントがあり17位、ニューイヤー駅伝への連続出場が途切れてしまった。高橋監督の「堅く行きたい」は、油断は絶対にしない、という意思表示だろう。
「そのために匠吾の1区も考えています。少しの負けはいいのですが、1区の出遅れはなんとしても避けたい。絶対に外さない、ということで匠吾を候補としました」
もう1人の候補に高橋監督が挙げたのが塩澤稀夕(25)で、23年ニューイヤー駅伝で富士通が2位になったとき、1区を区間賞と1秒差の区間4位になった実績を持つ。
「匠吾と塩澤の2人で1区と4区、と考えています」
もう1人、富士通が「堅く」戦うのに必要な選手が“駅伝男”の横手健(31)だ。ニューイヤー駅伝は23年に当時最長区間だった4区(区間4位)を任され、今年は2番目に長い5区で区間3位。東日本では22年は4区、23年は5区で連続区間賞。21年はアンカーの7区で逆転優勝のテープを切った。
「横手はニューイヤー駅伝のあと、試合に何も出ていないんですよ。大きなケガはないのですが、試合の前になると小さな故障をして。それが続いてずるずる来てしまいましたが、ここに来て走れる状態になってきました。タスキを持たせたらあいつはやってくれる。そういう信頼感があります」
そして10000m日本記録保持者の塩尻を今回は、直前の各選手の状態を見て、どの区間に起用するか判断できる。いわばジョーカー的な存在としてチームに貢献する。
東日本実業団駅伝は大半のチームが、最長距離の3区にエースを置く。だが他の区間はニューイヤー駅伝ほど長い距離ではない。起用区間はそのときのチーム状況でも大きく違ってくる。だが過去2年間の富士通は、距離の短い4、5区で抜け出して勝利を手にしている。終盤の6、7区よりも早い区間でリードを奪えば、優位な展開に持ち込める。そのために4、5区に強い選手を起用することもあるが、選手層が厚く4、5区に強い選手を起用できるチームが、その展開に持ち込みやすい。
今年その2区間で抜け出すのは五輪マラソン代表だった中村か、“駅伝男”の横手か、それとも10000m日本記録保持者の塩尻なのか。富士通が5連勝を決める区間を予想しながらレースを見ると、テレビ観戦が面白くなるだろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)














