中村、鈴木、浦野のマラソン勢が好調

富士通の強みはタレントが多数揃っていること。21年東京五輪には5000mで松枝博輝(31)と坂東悠汰(27)が、マラソンでも中村が代表入りした。21年には鈴木がマラソンで、23年には10000mで塩尻和也(27)が日本記録保持者になった。塩尻は3000m障害でも、順天堂大学2年時の16年にリオ五輪代表になっている。中村、鈴木、塩尻、浦野は学生時代に、箱根駅伝の区間賞も獲得している。

タレント揃いということもあり強化は個人が中心で、マラソン勢の代表選考スケジュールを優先して駅伝に起用しなかった年もあった。それでも十分戦える陣容になるのが富士通だ。今年の東日本大会は5000m代表だった松枝、坂東をエントリーから外し、マラソン勢が中心の布陣になる。「健吾か匠吾が、最長区間の3区を走ると思います」と高橋監督。

鈴木は3月の東京マラソンで2時間11分19秒の28位、故障で途中棄権した昨年10月のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)から立て直したが、準備不足は否めなかった。

「9月のコペンハーゲン・ハーフが微妙な結果(1時間02分20秒)でしたが、鈴木はしばらくレースから遠ざかっていたので、感覚を戻すにはちょうど良かったと思います」

その後の練習の状態も見て、最長区間候補の一番手としている。意外なことに、出場すれば東日本大会初登場。これまでは故障が多かったが、この1年は少なくなっていることを意味している。

中村は東京五輪前からの故障が尾を引き、19年MGC優勝時と同じレベルの練習ができず、今年2月の大阪マラソンも途中棄権した。だが8月の北海道マラソンは2時間15分36秒で優勝。パリ五輪は間に合わないと覚悟していたが、来年の東京世界陸上の代表入りにはこの冬のマラソンで挑戦する。

「何事もなく淡々と練習をこなしてきています。安定感も抜群ですね」

そして浦野の力が上がっている。今年3月の東京マラソンは2時間08分21秒(17位、日本人6位)だったが、「29kmから30kmまで一度トップに立っていました。(35km以降でペースダウンしたが)マラソンの力は付いています」と評価できる内容だった。9月のベルリン・マラソンも、日本歴代2位(2時間05分12秒)と快走した池田耀平(26、Kao)に前半は食い下がった。30km以降で腹痛に見舞われ記録を出す好機を逸したが、「これは! っていうくらいに練習はできていた」という。

マラソン勢3人は駅伝でスピードを再確認し、この冬のマラソンに出場する。東京世界陸上の標準記録である2時間06分30秒と、選考されるための強さをアピールしに行く。