「新宿野戦病院」はまさにクドカンワールド
影山 クドカンドラマの流れで「新宿野戦病院」(フジ)。僕は大絶賛です。
歌舞伎町が舞台でクドカン脚本。小池栄子が海外での医師免許は持っているけれど、日本では無免許、その医師が歌舞伎町の野戦病院と言われる病院にやってくる話です。彼女がブロークンな英語と、お母さんとのつながりで岡山弁を駆使する。僕は生まれ育ちが岡山ですが、彼女の岡山弁はすばらしいネイティブ岡山弁でした。
クドカンは命の尊さをとりあげて、命に軽重はないというメッセージを、特に最終回に結集させました。エンディングの持っていき方がすばらしく、彼だからこそ書けたドラマです。
田幸 命は平等と言っても、実は全然平等じゃないというのが、ドラマを見ていくとわかるわけです。富裕層は戦争に行かずに済んだり、コロナになっても優先的に診てもらえたり、命は全然平等ではない。
倉田 ある医療機器が1台しかない状況で、ホームレスのシゲさんと防衛副大臣が運ばれてくる。先に運ばれてきたのはシゲさんなのに、機器は政治家に使われちゃって、シゲさんは助からない。命は平等じゃないという現実から目をそらしてはいけないと言われたように感じました。
ホームレスやオーバーステイの外国人といった方々の存在が、深掘りするわけではなく<雑に>描かれて、その人たちの命を全員<雑に>助けていく。その展開に最初は抵抗がありましたが、命は平等に<雑に>助けるという医師の信念がだんだんわかってきて、あっ、そうか、目の前に命の危険がある人がいたら、誰彼構わずとにかく助ける、それが医療の基本だと、こちらも受け入れ態勢が整ってきた感じがありました。
ドラマの中では、コロナ後にまた新たなウイルスが登場して、コロナのときと同じ問題が起きます。結局同じことを繰り返すわけです。前例から学ばないということが現実世界ではたくさんあるので、そういった点もシビアに描いていました。