自閉スペクトラム症について知ってもらいたい

――このドラマを通じて、より多くの人に自閉スペクトラム症についてさらに深く理解してもらうためには、どんなことが必要だと思われますか?

最初にプロデューサーの松本(友香)さんから企画書をいただいたときに、まずは自閉スペクトラム症について知ってもらうことが一番大きいんじゃないかなと思いました。我々のような、障害を持つ家族がいる人たちは周りの目が気になるんです。それが生きづらさにつながっているのかなと思います。なので幅広い層の方が見るドラマに取り上げられて、柳楽さん演じる洸人が親代わりとなって、美路人と一生懸命頑張っている姿を見てもらうことで考えていただけるチャンスになるのかなと。なぜ理解をしてもらえないのか考えたときに、「自閉スペクトラム症って何?」「知的障害って?」と聞きなれない言葉が一番先にくるのが原因なんじゃないかなと思ったんです。言葉の意味が分かりづらいから、とりあえず避けようと思われてしまうことが多いのではないかなと。そこに僕自身も生きづらさを感じたことがあるので、ドラマを通じて知ってもらえる機会になればいいなと思っています。

――周りの方に理解をしてもらうまでにどのくらいかかりましたか?

20年ぐらいかかりました。僕自身が若かったということもありますが、子どもの頃の宏介はじっとしていられずに奇声を上げてしまうので、その姿を見て「お前の弟、大丈夫か」と言われたくないから、説明せずに隠したほうがいいなと思ってしまったんです。以前に比べると理解がだいぶ浸透してきたこともあって、今回のように啓蒙していく機会も増えてきましたし、暮らしやすくなってきたと感じています。伊庭葉子先生が運営している「さくらんぼ教室」のようなスクールもありますし、各学校に特別支援学級があったりしますよね。

僕自身、現在悩めるきょうだいたちを支えたいと共同で運営している「福岡きょうだい会」で副会長を務めるほかに、障がい者のきょうだいを支える団体「全国きょうだいの会」の事務局長として講演をさせていただく機会があるんです。そこで、ある親御さんからお兄さんが結婚しようとしたら、弟さんに障害があることで破談になったと相談されたことがあったんです。本人同士は結婚したいけれど、先方の親御さんが障害についてよく分からないために、勝手に娘さんが苦労をするのではないかと考えて反対されたんじゃないかと思うんです。もっと理解を深めてもらえたら、障害があるという固定概念だけで判断することは少なくなっていくと思うので、このドラマもすごく価値のある番組なんじゃないかなと思っています。

画家の太田宏介氏