時には厳しくすることも愛
――本作には“愛の掛け違い”というキーワードが隠されています。コミュニケーションが難しい現代だからこそ、想いが食い違わないようにすることが大事だと思いますが、信介さんはどのようにお考えになりますか?
僕は優しいだけが愛ではないと思っているので、宏介に対して厳しく接することがあります。それは一流の画家になってもらいたいから。障害の有無に関係なく、一流の画家になってほしい。ただ一方では、「障害があってもここまでできるならすごいじゃない、昔はこうだったから」と甘やかしてしまう母もいて…。だけど上を目指すのであれば、宏介はちょっと怠けていると感じる部分もあるし、障害があるから許されていることもある。ですが、一般社会ではもっと努力している人はたくさんいる。なので、母が元気なうちは僕は厳しくして、万が一母に何かあったときは、嫌でも寂しい思いをすると思うので、その時が来たら優しくしようかなと思っています。
信介氏の横でニコニコと目を合わせ、一緒に取材を受けてくれた宏介氏。そんな宏介氏を優しく見つめながら「今、宏介が仕事ができているのは、両親が個展を毎年開催してくれていたから 。そこは間違いない事実なので、感謝しながら続けていきたい」と信介氏が語ってくれた。絵から発信されるパワーに惹き込まれるように、私たちも理解を深めることが大切だと考えさせられる。