“義理と人情の街”で生まれた対話形式のイベント
江戸時代から400年の歴史を持つ富岡八幡宮。情緒ある門前の商店街は国内外からの観光客でにぎわっている。そこから歩いて数分の場所にあるカフェは、地元住民の熱気に包まれていた。
衆院選の公示直前となる10月13日、東京15区から立候補を予定している5人が参加して「選挙マルシェKOTO」が開かれた。「選挙マルシェ」は地域の住民が主体となり、投票率の向上などを目的に開催したパネルディスカッションだ。他者を論破するのではなく、立候補予定者による建設的な議論や人となりが伝わることを目的としている。主催者の意向に賛同したカフェのオーナーが、無償で会場を提供したという。
「対等な立場で尊重しあう。お互いの意見を聴く。人格否定はしない。ヘイトスピーチ・差別表現をしない」
主催者が決めたルールは、当たり前のように聞こえるが、それがいかに大切なことなのか、選挙妨害事件を経験した東京15区の有権者は深く理解しているように感じられた。

「立候補予定者に声をかけたのが1週間前だった。全員に参加してもらえるとは思っていなかった」。「選挙マルシェ」は主催者のこうした挨拶から始まった。
登壇者は、大空幸星氏(自民)・金澤結衣氏(無所属)・小堤東氏(共産)・酒井菜摘氏(立憲)・須藤元気氏(無所属)(※五十音順)の立候補予定者5人。
この日、初めて顔を合わせた立候補予定者どうしで名刺交換をしたり、握手をしてエールを交換したりするシーンも。互いをリスペクトする光景を見て、参加者は自然と笑顔になっていた。

ディスカッションが進むと、立候補予定者の人柄が垣間見える場面が幾度も見られた。
大空氏が喋り始めると、ポケットに入れていたスマホに搭載されている米アップルの音声アシスタント「Siri」が反応してしまい、会場が爆笑に包まれた。他の立候補予定者も笑顔になっていた。
また、身振りを交えて話していた小堤氏の資料が床に落ちてしまった場面では、隣に座る金澤氏と酒井氏が一緒になって拾っていた。
床に座ったままの聴衆を気にした司会者の発案で、須藤氏が「体操のお兄さん」としてリードして、立候補予定者と参加者が一緒にストレッチをする時間が設けられた。

参加者の一人は「こうしたイベントに来るのは初めて。政治家って近寄りがたい雰囲気があったけど、私たちと同じような、そこらへんにいるような人なんですね」と話していた。
主義主張の異なる立候補予定者による舌戦が繰り広げられたが、全員の意見が一致する場面があった。参加者が「補選時の選挙妨害事件についてどう思うか」と問うと、全員から「候補者どうし意見が違うのは当然で、自由な選挙戦が守られないといけない」という趣旨の考えが述べられ時のことだった。














