ストレスや不安から突然パニックを起こすことがある強度行動障害。全国に4万人以上いるとされていますが、障害者施設への入所は困難な状況です。家族は、自分たちが老いる前に受け入れ先を決めたいと苦悩しています。

強度行動障害 突然パニックを起こすことも

長野県に住む蒲和美さん(51)と息子・涼太さん(27)。

涼太さんは重度の知的障害がある。コミュニケーションを取ることは難しいが、和美さんは些細な意思表示から息子の思いを感じ取る。

涼太さん「お母さん!お母さん!」
和美さん「なに?」
涼太さん「お母さん、お母さん!」
和美さん「そっちは飲んでいいよ、その牛乳」

普段は家事の手伝いもするなど、自宅で穏やかな生活を送っている。しかし、それが一変する時がある。涼太さんが突然「パニック」を起こすのだ。

和美さん「涼太、もういい加減にして!」

壁や床に何度も自分の頭を叩き付ける。和美さんが必死に止めようとしても収まらない。こうしたパニックを起こすのは、涼太さんが知的障害に加え、「強度行動障害」もあるからだ。

「強度行動障害」とは、自分や他人を傷つけたり物を壊したりするなどの行動が高い頻度で起こる状態を指す。生まれつきの障害ではなく、周りの環境などへのストレスや不安によって生じる。

厚生労働省の調査によると、「強度行動障害」のある人は全国に少なくとも4万人いるとされる。

和美さん
「1分弱、何十秒で収まるときもあれば、一時間半ひたすらやっている時もあります。抑えても抑えても、もう止まらない、また始まるみたいな。もう相当な力ですね、私も腕が上がらなくなったりとか。抱きかかえるように止めると、このへん(腕や肩)に頭が来てゴンゴンして、あざになったり」

涼太さんは幼少期から「パニック」を起こすことがあり、常に目を離すことができなかった。体の成長につれて力は強くなり、高校生になると抑えきれず、涼太さんがけがをすることも頻繁になったという。

「パニック」が起こるきっかけは、涼太さんの場合「時間への強いこだわり」が関係している。

和美さん
「お風呂入るのが午後5時までには。最近は午後5時までにはあがらないとダメみたいで」

リビングには涼太さんの一日の予定が書かれたホワイトボードがある。

6:45 カメラがきます、さつえい
7:00 はんぺん やく
8:10 出発、ゴミすて→みちのえき

こうした予定が少しでも狂うと、その後の行動の見通しが立たなくなる不安からパニックを起こすのだという。一日中、目を配らなければならず、家族の生活は常に涼太さん中心だと話す。

和美さん
「涼太に合わせた生活に、どうしてもなってしまっているので、自分がどれだけ具合悪かろうが眠かろうが(涼太が起きる)午前3時には起きないといけない」

和美さんは涼太さんのためにいまは仕事をしていない。

夫の竜也さん(46)は整体師で自宅の隣に整体院を開き、すぐに駆けつけられるようにしている。