■見つかったのは遺書を書いた女子大学生ではなく…
捜索中に見つかったのは女子大学生ではなく、新たに自殺を試みていた男性でした。通称「救いの電話」近くのベンチに座り込んでいたところを保護されました。


(スタッフ)
「しばらく考え込んでうつむいて、携帯とか触っていたので、『ああこれは』と思い・・・」
(茂幸雄さん)
「昼間ご飯食べた?食べてない。2日くらい??」
■「何とかしちゃる、大丈夫や、死ぬ必要ない。。。分かったよ、大丈夫」

「お餅いっぺん食べ。入らない?おもちはまた違うかも知れん・・・あんまり食べられんかも知れん、2~3個で」

保護した人に食べてもらうのは、この地方で正月に食べられる「大根のおろし餅」。仕切り直しを願って、振舞っています。

(茂幸雄さん)
「あんた、一番誰を怨んでる?会社、憎いやろ」
「楽にせえ、あとは心配するな。な、何とかしちゃる、大丈夫や、死ぬ必要ない。死んだらあかん、死んだらあかんのや、解決できん。」

「大丈夫、うん、分かったよ、な」
(スタッフ)
「はい、おろしもち、どうぞ~」
(茂幸雄さん)
「遠慮せんで食べてみ、もの凄くおいしいよ、力出るぞ」
■パワハラ、過労、妻が家出・・・たどり着いたのが東尋坊だった
男性は、関東地方の大手メーカーに勤めていました。しかし会社で上司のパワハラに遭い、過労で吐血。働けなくなり仕事を辞めた矢先に、唯一の相談者だった妻が家を出て行きました。手元には僅かな金を残すのみでした。

(自殺を企図した男性)
「会社を怨んで、『何で、何で』と思いここに来た。生活しなきゃいけないし、働かなきゃならない、で働く場所がこうだともう行き場所がない」

「『死ぬことはないじゃないかと』。。。自分も同じ立場ならそう思うけど、自分がその状況に置かれたらそれしかない。数学の数式と一緒で、1+1=2でしかない」
(記者)「今は冷静に?」

(自殺を企図した男性)
「さっきは死ぬことしか考えてなかったけど、聞いてるだけで元気が出ますねあの人。『大丈夫だ』って、全部ネガティブな答えは出てこない。ああいうのが支えになるかもしれないですね、この状況だと。」


「まったく他人なのにこんなに親身になってくれる人がいるって、有難いですね」

男性はこのあと1週間、東尋坊の近所のアパートに保護され、生活支援を受けました。その後、茂さんが男性の地元の弁護士と連絡を取り、過労による自殺未遂と認定。会社側から新たな住居の提供と関連会社への再就職を勝ち取りました。


遺書とリュックを残して姿を消した女子大学生は、数日後に10キロ離れた海岸で警察に無事保護されました。学業不振だけでなく、孤独によるうつ状態で、心配を掛けさせたくない、という思いから、両親に相談も出来ず自殺を図ったとのことでした。

(茂幸雄さん)
「もったいない、みんな遺族と言うか家族がいるんです、苦しむんです。命は本人の問題は間違いない、でも本人だけのもんじゃないよ、と」
「もうこれ以上東尋坊に送り込まないでください、自分の地域で解決してください」
