真っ赤なヒガンバナに黒いチョウ。青江隆晴さんが撮影した秋らしい1枚です。

生物に詳しい東洋産業の大野竜徳さんに聞きました。
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ーこの黒いチョウは?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「写真に写っているチョウはクロアゲハですね。アゲハチョウ科に属するアゲハの中でも大型で、優雅に舞う姿はまさに花と対比させる主役といえます。ヒガンバナの真紅の花と漆黒の翅のコントラストは絵画のようで、この景色を楽しみにしている人もいらっしゃるのではないでしょうか?
クロアゲハは日本全国に分布し、春から秋にかけて数回発生します。翅を広げると10cm近くにもなり、黒い翅の中央に白い斑紋があるのが特徴。
似た種類にオナガアゲハやカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハなどがいますが、クロアゲハはアゲハチョウの特徴である翅の下にちょっと伸びた尾状突起が短めで、後翅に青緑の光沢が少ないため比較的見分けやすい種です」
「バタフライガーデン」をつくる愛好家も
「クロアゲハの幼虫はサンショウやミカンなど柑橘類の葉を食べて育ちます。庭木や果樹園では『葉を食べる害虫』として嫌われ、私の家の周りでも幼虫をつまんで捨てている光景を見ますが、実際には数匹ついている程度なら木は枯れることはありません。
むしろ、こうした植物がある庭はチョウがやって来る生き物豊かな庭の証拠です。幼虫がこういった植物をかじるので、周囲にもうっすら香りが広がり、幼虫を素手で捕まえたり、糞をさわったりするとちょっといい香りがします。
なんと、食草を植えてアゲハチョウを呼び込んでお庭で蝶を舞わせる『バタフライガーデン』を作る愛好家もいらっしゃり、益虫として捉えられることもあります」