◆火山にとっての「時間」
日本で最後に起きた破局的噴火は7300年前、鹿児島県薩摩半島から南に50キロに位置する海底火山「鬼界カルデラ」で起きました。火砕流は海を越え、南九州一帯の縄文人を絶滅させました。この場所での破局的噴火は6000~1万年に1回起きている、と研究者は推定しています。そして鹿児島県には現在、カルデラから120キロの位置に九電川内原発があります。
「1万年に1回なら“ほとんど起きない”ではないか」。電力会社がそう考えるのも不思議はないのですが、火山活動は時間についても人間のスケールをはるかに超えてきます。
平成の普賢岳噴火は、山頂(1359メートル)の東にある地獄跡火口から始まりました。5年間続いた火山活動で地獄跡火口には巨大な溶岩ドームが形成されました。標高は元の地獄跡火口より250メートルも高くなり、山の形はすっかり変わってしまいました。平成の噴火で生まれた山は「平成新山」と命名されました(最高部は少しずつ沈降していて、現在は1470メートル台と見られます)。

ところで、前回の噴火は江戸時代の1792年。噴火は約50日間続き、続いて起きた直下地震で眉山が大崩壊を起こして有明海になだこんだため、島原と対岸の熊本を大津波が襲いました。死者1万5000人は日本の火山災害史上最多。今も「島原大変肥後迷惑」と語り継がれます。