マヤの大ピラミッドと聖なる泉

メキシコの世界遺産「チチェン・イツァ」

メキシコの世界遺産「古代都市チチェン・イツァ」は、マヤ文明の代表的な遺跡です。最盛期は11世紀頃で、実に4万人が暮らした都市でした。その中心には、高さ24メートルの「ククルカンのピラミッド」がそびえています。

ククルカンのピラミッド

ククルカンとは羽毛の生えた蛇の姿をした神のこと。この大ピラミッドは春分と秋分の年に2回、階段の影がジグザグに映って、あたかもククルカンの体が現れたように見えます。これは意図的に設計されたもので、ピラミッドは種まきや収穫の時期を知るための巨大な天文装置だったと考えられています。

年に2回垂直の光の柱が現れる地下の泉セノーテ

シーテープやシーギリヤには濠がありましたが、チチェン・イツァには濠どころか川も近くにはありません。マヤの人々は都市に必須の水を、「セノーテ」と呼ばれる地下の泉から得ていました。セノーテはたくさんあるのですが、番組で撮影したのは、やはり年に2回、地表の穴から差し込む太陽の光が垂直に見える特別なセノーテ。まるで光の柱…この地下の泉も天文装置だったと考えられています。

このように古代の人々のさまざまな叡智をみることができる都市遺跡。世界遺産の「古代都市」はいまも魅力に満ちています。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太