アレルギーと闘う子に 先輩としてのメッセージ
子ども同士の交流も欠かせない。
小学高学年や中学生は思春期とも重なって治療の継続は難しくなる時期だ。何とか励ましたい、と大森さん親子は交流会を定期的に企画している。佑人さんは、“先輩”としてさりげなくアドバイスをする。
佑人さん
「将来食べたい物ある?」
小麦アレルギーがある小学6年生の少年
「食に興味ないから」
佑人さん
「大学生になると結構みんなと食べないといけない場面とかあるで」

「経口検疫療法」を希望する人は多いが、続けるには強い意思と家族の協力が欠かせない。大人になった時、「やっておけばよかった」と後悔だけはして欲しくない。
大森さん
「食べたら命に関わる、死ぬっていうのを毎日食べることを私も佑人もやってきた。みんなやっていない時期に経口免疫療法やって乗り越えてきたけど、最近テレビで簡単にクリアできるイメージついているけど、結構保護者も子どもも頑張らないといけない。情報共有が必要」
佑人さん
「昔の自分に感謝しているかっていうとわからないけど、ふとした瞬間にやっていてよかったなって思う。今大学生なので、これから実際に働いていったりするので今の目標は何の問題もなく働けたらと思う」

尽きぬ課題 社会に求められる理解と支援
LFA代表の大森真友子さんは食物アレルギーに対する学校や社会の認識が少しずつ変わってきたと実感する一方で、課題はまだ尽きない、と話す。
いわゆる7大アレルゲン(卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そば)が2025年4月から変わることを多くの人がまだ知らない。新たに「くるみ」が加えられ“8大”になる。
元旦に起きた能登地震では多くの自治体がアルファ米(28品目除去、加水のみで食べられる非常食)を備蓄していたことでアレルギー対応はできている、という判断だった。しかし大森さんの元には「何週間もご飯だけを食べている」という幼いアレルギー児を持つ保護者からのSOSが届いた。
アレルギーへの理解や支援は個々人によって大きく異なる。災害時に声をあげられない人もいることを担当者は知っておいて欲しいと話す。大森さんは厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会の委員に就任し当事者の声を発信している。
佑人さんは大学卒業後に食品会社に就職、営業を担当し大阪を離れ一人暮らしをしている。「食べて治す」治療で乳製品を気にすることなく食することができ、会社の飲み会にも積極的に参加している。
「自分が受けてきた治療の意味を今一番感じているのでは」と大森さんは語った。