あえて“食べる” 「経口免疫療法」
アレルギーは本来、体に害を与えないものを悪いものとみなし過剰に免疫が反応してしまうこと。蕁麻疹や、呼吸困難など人によって出る症状は違う。

「経口免疫療法」は、原因となる食べ物をごく少量ずつ口にして体を慣れさせていき、耐性をつけながら量を増やしていく方法だ。
主治医の谷内昇一郎さんはこの治療の第一人者だ。
谷内昇一郎 医師
「お母さんがきちんと除去食をやっていてもなかなか治らない。むしろ悪くなっている人もいてどうしてかと。食べて治した方がいいという考え方にたどり着く。量を増やすとショック起こす危険性があるので極めて厳重な監修のもとで行う」
佑人さんが治療を始めたのは小学3年生の時だった。当初、ショック症状は、わずか0.1㏄の牛乳を飲んだだけで出た。これほどの重い乳アレルギーで治療を受けた例は、世界でもわずかしかなかったという。
少量ずつ家でも牛乳を飲む練習を続け、量を増やす時は必ず入院していた。
医師「きょうは70㏄持ってきたから」

治療を始めて2年ほどが経った時には、70㏄まで飲めるようになっていた。
それでも、その日の体調や環境の変化で体に異変は起こる。
「痒くなってきた?」
「気持ち悪い?」
「気持ち悪いのとちょっと喉が痛い」
「喉が痛い?」
牛乳を飲んでおよそ30分後、息苦しさと身体の痒さを訴え始めた。アナフィラキシーと呼ばれる症状のひとつだ。

ショックを和らげる措置が直ちに取られる。
「落ち着こう」
「暴れたら痒くなるかゆくなる」
「落ち着こう」
「苦しいの?」
身体を冷やし、呼吸を安定させる薬が投与されようやく落ち着いた。
「もうきょうやめちゃう?」
「落ち着いていたら頑張る」
「お母さんが折れそうやわ」
「そんなにやめてほしい?」
大森さんはため息をついて佑人くんに一言告げた。
「…やれるならやりなさい」














