岸田総理は、安倍元総理の国葬について「国民の皆さんに対して丁寧に説明する努力を続けていかなければならないと思っています」と話しましたが、最新の世論調査では、安倍元総理の国葬に対し、賛成は先月の調査と比べ4ポイント低下の38%、反対は6ポイント上昇し51%となり過半数に達しました。その理由としては、岸田総理の説明に納得していないという意見が多数あります。費用や運営業者など“国葬”への不信感について調べました。
■国葬受注企業は“桜を見る会”の設営業者 「便宜を図った事実はない」

井上貴博キャスター:
時間があまりないなかで、やることを前提に話が進められた結果と言えるかもしれません。岸田総理は9月4日、安倍元総理の国葬について「国民の皆さんに対して丁寧に説明をする努力を続けていかなければならない」と話しました。
国葬の受注企業について、内閣府は企画演出および警備等業務を一般競争入札にかけました。ですが、蓋を開けると入札は1社のみということで、事実上競争がなされていないという形と言えるかもしれません。落札額は1億7600万円で、イベント会社「ムラヤマ」が落札しました。
過去を紐解いていきますと、この会社は「桜を見る会」を会場等設営業務として5年連続(2015年〜2019年)で落札していました。落札額は年々増加していたという事実もあるようです。
落札額については、▼2015年が773万5000円で、1000万円を下回っていましたが、▼2019年には1680万円となっていました。2019年には、入札する前に内閣府と打ち合わせをしていたという違法性の恐れがある中で、この辺りの調査もどこまで行われていたのかというのが、なかなか情報が出てきませんでした。
今回の入札ではもちろんこういったことはなかったということで、松野一博官房長官は5日、「(今回の落札で)特定の企業に便宜を図った等の事実は一切ありません」と説明しています。

では、イベント会社「ムラヤマ」という企業がどういう企業なのか、少し調べてみました。
創業120年ということで大変歴史のある会社でした。これまで手がけた政府の式典は、▼全国戦没者追悼式、▼東日本大震災十周年追悼式(2021年)、▼中曽根元総理の内閣・自民党合同葬(2020年)、そして▼吉田元総理の国葬(1967年)も手がけていました。他にもスポーツ関連イベントや、世界規模の大きなイベントなど民間企業のものも手がけている会社でした。
今回の落札について、岸田総理は4日、「武道館で事業を担うことができる業者は4社ほど。今回正式な手続きのもとに落札されたものだと認識しております」と発言しています。
■「国葬反対」「総理説明に納得せず」が過半数 不信感拭える?

国葬について各社、世論調査を行っています。私たちJNN系列の世論調査に関してお伝えします。9月3日、4日に行われた調査の数字です。<全国18歳以上・2446人対象、RDD方式(固定・携帯) 有効回答は1218人(49.8%)>
【安倍元総理の国葬】
▼賛成 38%(8月の調査と比べ4ポイント低下)
▼反対 51%(8月の調査と比べ6ポイント上昇)
【国葬をめぐる岸田総理の説明】
▼納得している 25%
▼納得していない 63%

TBSスペシャルコメンテーターの星浩氏は、国民が抱く懸念として3点挙げていました。
▼なぜ行うのか、法的根拠への疑問
こういった基準で国葬を行うというルール作りがない中で法的根拠への疑問
▼ “事後報告”など費用の全体像が不明であること
今、費用・全体像が全く提示されていない。そういったところが不明であること。
▼調査が進む中、“旧統一教会”と安倍元総理は関係が深かったのでは?
旧統一教会と安倍元総理の関係性が深かったのではないかという疑問があるなか、党内の安倍派などへの配慮から中々進捗が無いと見えてしまったところ。
星氏は「岸田総理は国民を納得させる説明はできず、批判は今後さらに高まるのでは」というふうに仰っています。

ホラン千秋キャスター:
国葬を巡っては、国葬をしますよというところに決まるまでのプロセスの問題、費用の問題、それから感情的に安倍元総理を国葬にすべきかすべきじゃないかという様々な問題が、織り混ざって論じられることが多いとは思うんですけれども、やはり全員が全員賛成にならなかったとしても、なぜ行うのかということをしっかりと説明してからやりましょうというふうに正式なプロセスを踏んで決めるということがなかったので、何か必要以上に議論になってしまっているような感じはありますよね。
スポーツ心理学者(博士)田中ウルヴェ京氏:
全くその通りだと思います。100%皆さんが賛成するというようなものは、難しいですよね。だからこそ必要なのが基準だったわけですが、でも、国葬のあり方というのは歴史的にずっと背景があって、今回岸田総理は色々な説明はされたし、そしてこれからもされるというふうには伺っていますが、基準がないということが基準なんだという現状を、どのようにするかは、岸田総理まだ仰っていないんです。基準に客観的なものがないんです。
例えばちょっと極端な言い方ですが、在任期間がこのような期間であればどんな方でもするなのか、あるいは、このような功績をした方は具体例はこれとこれとこれなんだって。それができないのであれば、やはりそれは基準がないものをこれからするので、皆さんにお話を聞かなければいけませんということも、するべきでしょうし。そうすると今後、いくらご説明いただいたとしても客観的基準はないということは、そのまま残るわけなので、説明が難しいなと思います。
ホランキャスター:
説明をする前に決めてしまったというところが、さらに後から何を言われても素直な気持ちで聞けないという部分も、もしかしたらあるのかもしれないですね。
田中氏:
主観的なものにしか見えないということは、岸田総理にとっても難しいだろうなと思います。
井上キャスター:
元々は、一国のリーダーの死をみんなで悼もうとするべきものが、何か今、国を真っ二つに分断してしまっている、何かそれも悲しいなというふうに感じます。