「野球少年がグローブと寝るように…」

式のおよそ2か月前。二本松市に南津島のメンバーたちが集まりました。

田植踊りとともに演じられる神楽で使う獅子舞の頭が完成し、最後の仕上げが行われていました。獅子頭は神楽を演じる一人、三瓶友一さんが一から手作りしたものです。

獅子頭の制作を自ら買って出たという三瓶さん。踊りが洗練されてきた学生たちに、さらに芸を磨いてほしいと思っています。


三瓶友一さん「野球少年がグローブとボールを手に持って寝たりするっていうのと同じようにいつでも触れるときに学校に行けばあるなっていうことになれば一番いいですもんね」

工房を開き、制作に励む三瓶さんですが、元々、専門知識があったわけではありません。本業は理容師で、原発事故の後、古くなったひょっとこの面を作り直すため、カルチャーセンターに通い、技術を身につけました。

獅子頭を作るのは初めてのことで、何度も失敗をしながら、ようやく仕上げました。

三瓶友一さん「1年半…1年半ぐらいかかってるんでしょうね。仕上がるまでだから」

学生たちとともに再びつながりだした田植踊り。保存会の集まりは、バラバラになった住民が集う、貴重な機会でもあります。

三瓶友一さん「運動会ができないわけですし、球技大会もできないわけですよ。一番慣れ親しんだところで、自分ができるものがそれぐらいだったから、やりましょうっていう思いで。あれがないとやっぱり寂しかったんじゃないですかね。繋がりがなかったかもしれないですね。田植踊りは…やってよかったですね

また、社壇は使われなくなった古いものを保存会のメンバーで大工の紺野肇さんが修復しました。

紺野肇さん「悪いところもあるのかもしれないけど実際これを使ってきたんだから、使ってほしいということで後々も長く継承してもらえれば、もう最高です」

東北学院大文学部・金子祥之准教授「出演するにあたって必要な道具のかなりの部分がそろったので、身の引き締まる思いですね。うれしいという気持ちと、その気持ちに応えたいなという気持ちとその両方が混在している気持ちです」