予約13か月待ちの大ヒット「包丁」…戦略は“共感”

続いての、すごいマーケティングは「わずか1年半で4億円以上売り上げた包丁」。

『日経クロストレンド』勝俣編集長:
今は商品が優れているだけでは売れない時代。商品のスゴさをお客さんのニーズと合わせて伝えていくという努力が必要。それをエンジニアがやっている企業がある」

マーケティング部じゃないのに包丁を4億5000万円以上売った“技術者”がいるのは、工業用刃物を製造する『福田刃物工業』(岐阜県・関市)です。

ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ「超硬合金」で作られた日本初の包丁「KISEKI」は、手を添えなくてもトマトにすぅ~っと刃が入り、超薄切りもできちゃう切れ味。

わずか3人の技術チームが2年かけて開発しましたが、一般消費者向けの商品は初めて。どうマーケティングするか悩んだ末…

『福田刃物工業』技術部長 福田恵介さん:
お客様の声を一番大事にしました」

お客さんの意見を聞くため、体験会を何度も開催。切れ味だけではなく、持ちやすさ、疲れ具合などの意見も集め、重心の位置をずらすなど微調整を重ねていったといいます。

体験会に参加した60代女性:
「感動しました。家で使っている包丁は何なんだろうというぐらい」

プロの料理人も、「味に違いが出る」と話します。

創作料理店『葉菜』 水谷千佳さん:
「キャベツの千切りをしたら、切り口がピカピカ光ってツヤツヤ輝くのでスゴいと思いながら、お客さんに出したら『いつもと味が違うからこのキャベツを分けてほしい』と言われて」

「味が違う」となればデータ化!
実際に、味覚センサー試験では野菜の甘さや、魚の旨みが残る結果も出ました。

さらに技術者ながらマーケティングを勉強し、商品のキャッチコピーを決める時は「A/Bテスト」を実施。複数の候補をネットにあげて反応を分析したといいます。
こうして決まったキャッチコピーが、「関市はついに『おいしい切れ味』を手に入れた」

今や予約13か月待ち、1本3万4650円の包丁「KISEKI」は売り上げ4億円超えの大ヒット商品になったのです。

『日経クロストレンド』勝俣編集長:
「SNSなどの普及で企業と消費者の対等感が出てきた中で、『私達こういう人なんですけど共感できる人はいませんか』と、共感できる人とのコミュニケーションで物が売れていく時代