■なぜ、今、再び月へ

では、なぜ、今、再び月を目指す計画が動き出したのでしょうか。実は月面着陸20周年にあたる1989年にはブッシュ大統領が月や火星への探査構想を打ち出していました。しかし、巨額の費用の問題などから立ち消えに。その後も、浮かんでは消えてきた有人での月探査計画ですが、今回の『アルテミス計画』が決定したのは、トランプ政権の時です。実現の背景にはトランプ大統領自身の実績作りのためではないか、との指摘もありますがその他にも中国の存在が大きいとの声もあります。

『アルテミス計画』の発表は2019年5月ですが、その4か月前、中国が、無人探査機『嫦娥4号』で難易度が高い月の裏側への着陸を世界で初めて成功させました。月は、常に同じ面が地球を向いているため、電波を中継する衛星まで打ち上げて前例の無い月の裏側への着陸を成功させたのです。

そして、翌年(2020年)には、『嫦娥5号』により米ソに次ぐ土壌サンプル回収に成功するなど月での宇宙開発を進めています。また、今年7月、国際宇宙ステーションからの離脱を表明したロシアは、すでに中国と月面基地の建設で協力することを合意しているなど月探査をめぐる競争が、今、加速しているのです。

各国が、月での資源開発や宇宙産業での主導権争いを行う中で、人類の足跡は、月に、どんな風に残るのでしょうか。

(サンデーモーニング2022年9月4日放送より)