“令和のコメ騒動”いつまで? 実現しない備蓄米の放出
大阪府の緊急調査では、約8割の小売店で米の品切れが発生していることが判明。8月26日、吉村知事は政府に対し、備蓄米を放出するよう求めた。

大阪府 吉村洋文知事:
(コメの)需給がひっ迫しているのであれば、(備蓄米を)倉庫に眠らせておく必要はない。
これに対し坂本農水大臣は「新米が通常より早く出回り始めているので、不足感はだんだん減少していくだろう。備蓄米は備蓄米なので、よほどのことがない限り、様々な流通に影響を与える恐れがある。慎重に考えなければいけない」と発言。これを受け、岸田総理は坂本農水大臣に対して、流通不足の懸念に対処するよう指示した。

岸田文雄首相:
消費者の立場に立って、米の流通不足の懸念に対処し、引き続き市場を注視し、円滑な流通に取り組んで下さい。
なぜ政府は備蓄米の放出に慎重なのか。元農水官僚で、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏に聞いた。

キャノングローバル戦略研究所 山下一仁研究主幹:
そもそも消費者のことなんか考えていない。もし備蓄米を放出すると、供給量が増えるので市場の供給量が増えて米価が下がる。今まで農水省がやってきた米価を上昇して農家所得を維持するという政策が無になる。そういうことを恐れて、農林水産省は、備蓄米を絶対放出したくない。それが本音だと思う。今、農林省が言ってるのは「新米が共有されるからいいでしょう」。2024年の9月から2025年の8月までに食べる量を早食いしろと言っている。早食いしたらその分だけ2025年の8月にまた足りなくなるのは当たり前。今年の不足分を配布したら来年また不足になる。
“令和のコメ騒動”いつまで? 出来栄えは?新米収穫始まる

米不足の心配は今年に限ったことではない。去年を上回る猛暑で、2025年も米不足が起きないか懸念されている。埼玉県の米どころ、加須市では、一足早く、コシヒカリの収穫が進んでいる。2024年も猛暑だったが、米の生育状況はどうなっているのか。米の生産者である「おおや農園」大谷寿男代表に聞いた。

おおや農園 大谷寿男代表:
今年のコメは品質の良いものが獲れている。今刈った中では、比較的順調に生育していて、収量も平年並みかやや多いぐらいに獲れている。今年も暑かったので心配していたが、比較的いい品質のものができた。水をかけ流すことによって、少しでも温度を下げるように、根を健全に保てるような工夫をした。
こうした作業により、高温が続いたことによる米の品質への影響もないとのこと。
おおや農園 大谷寿男代表:
これから稲刈りをどんどん進めていくので、皆様のところにももうしばらくすると流通していくと思う。

この日、埼玉県内にあるJAでは新米の出荷検査が行われていた。米の粒が揃っているか、汚れや傷がないかなどを確認し、等級を付けていく。
JAほくさい 営農経済部 野中実さん:
今年のコメの品質で白未熟粒であったり、カメムシが多かったので被害の有無を調べている。今年の出来はまずまずだと思っているので、去年に比べれば期待してもらってもいい。
“令和のコメ騒動”いつまで? 暑さに強い新品種を開発

埼玉県熊谷市にある農業技術研究センターで開発しているのが、暑さに強い新品種「えみほころ」だ。「食べると顔がほころんで笑顔になる」との思いを込めて名付けられた「えみほころ」は栃木県産の「とちぎの星」と、埼玉県産の「彩のかがやき」から育成した品種を掛け合わせて開発した。

埼玉県農業技術研究センターの水稲育種担当・大岡直人さんは「暑さに強いというのが一番の特徴。暑さによって玄米に障害が出るが、その障害の発生の程度が軽減できる品種になっている。埼玉県熊谷市は非常に暑い街として有名だが、地の利を生かした、暑い気候を生かした研究を進めている」と説明する。今年の暑さでも生育は良好だという。「えみほころ」は、現在商品として販売できるようになる「品種登録」の申請中で、農林水産省が審査している。

今後、新米の流通量が増えるにつれ、米不足は解消されていくとみられるが、こうした米作りの現場の努力だけで、今回のようなコメ騒動は解決するのだろうか。