「みんなの不満が爆発した」デモの原動力となった若者たち

金平キャスター
「Ekattor TV(エカトルテレビジョン)というのですけれども、略奪攻撃を受けて、焼かれた後ですね」
防犯カメラに写った、敷地内になだれ込む人々。
民間のテレビ局だが、ハシナ政権を支持し、政府寄りの放送を行っていたことで襲撃された。
中はどんな様子なのか、撮影することが許された。
金平キャスター
「スタジオがこんなに壊されちゃっていて、全部、焦げていますね、上が」
放送で使う機器などもすべて持ち出されていた。
学生たちのデモ
「条件は一つ。裁判官の辞任」
8月10日、最高裁判所の前では、ハシナ政権に近い裁判官の退陣などを求め、学生たちのデモが続いていた。
デモの参加者
「ファシストのハシナが自分のために変えた司法制度を無くせば、国民の信頼を取り戻すことができます」
デモの参加者
「多くの学生たちが犠牲になったデモです。(バングラデシュは)困難を乗り越えて、世界の模範になると信じています」
今回、デモの原動力となったのは若者たち。
中心メンバーはバングラデシュの公立大学で、最難関として知られるダッカ大学の学生だ。
デモの中心メンバー ダッカ大学の学生
「この国の政府は私利私欲に走って、国民の事をまったく考えていません。そこにみんなの不満が爆発したのだと思います」
デモの中心メンバー ダッカ大学の学生
「これまで政府の独裁に押さえ込まれてきました。それに対して立ち上がったのです。反政府を掲げてみんなが1つになれたのは、すごいことです」
デモの中心メンバー ダッカ大学の学生
「国民の多くは、(ハシナ)前首相を逃亡先から、できるだけ早くこの国に戻して、厳しい裁きが下されることを望んでいます」
ダッカ大学では、学生デモを支持した大学の教職員らが集まり、「暫定政府に何を期待するか」をテーマに緊急シンポジウムが開かれた。
デモが成功した背景には、学生たちを積極的に支えた教授たちの存在もあるという。

ダッカ大学 タンジム 教授
「バングラデシュの問題は、独立してからこれまで、優れたリーダーに恵まれなかったことにあります。この学生デモは、必ず、国を発展させる政治の出発点になるでしょう」
そして街では、多くの若者が壁にスローガンや絵を描き、自分たちの思いを表現していた。

「わたしたちのバングラデシュ、独裁政権は終わった」
この大学生は、日本で暮らしていたことがあるという。

バングラデシュの地形に国旗をあしらった絵にこめた思いとは。
大学生
「リフォームという(意味の)メッセージもあります」
金平キャスター
「バングラデシュはいま、リフォームの時代?」
大学生
「そういう風にみんなが(思っている)」
別の若者たちは、デモで不安定になった社会を支えようと動いていた。

バングラデシュには信号機が少なく、警察が普段は交通整理をしている。
しかし、デモ後は市民からの報復を恐れ、職務を放棄。代わりに若者たちが交通整理をしていた。
金平キャスター
「彼らは街の清掃活動とかもやっているということで、市民からは感謝されているという」
こうした交通整理の学生ボランティアはSNSを使って連携し、担当地区などの振り分けをしているという。
道路の真ん中で「交通ルールを守りましょう」と書かれたボードを掲げる高校生の姿も。
高校生
「新しいバングラデシュを作ろうとする運動に参加して貢献したいと思いました。自由な国になることが夢です」
軍が水や食料を差し入れていた。
警察に襲撃された人が入院する病院でも学生ボランティアが活躍。医薬品や食料、衣服など、物資を運び入れていた。

ボランティアの学生
「私たちのデモによって政府が変わりました。今後、平等な国に変えていきたいという大きな夢を持っています」
すでに市場では変化が…。
男性
「長い間、みかじめ料を取られていました」
不法行為を行っていたのは、政府ともつながっていた、ならず者たちだという。
これまで、みかじめ料が価格に上乗せされていたが、いまは…。
市民
「たくさん魚を買ったけど安くなっています。生活が楽になりますね」
若者たちのデモは街の人にどう映っているのだろうか。
市民
「暫定政権が『学生たちの声を大事にする』と言っていることが、すごくうれしい」
65歳の男性は涙ながらにこう話した。