「アベノミクス」は否定できず
2012年12月に誕生した第2次安倍政権が始めた「アベノミクス」。
異次元緩和に代表される政策は、伝統的な政策とは大きく異なっただけでなく、その強権的な手法も相まって、強烈なものでした。
2021年まで長きにわたり、安倍・菅政権の「看板」であり続けただけに、岸田政権がそれを否定することなど、不可能だったでしょう。
自民党内でアベノミクスを否定することは、安倍長期政権の「功績」を否定することに等しかったのです。
安倍氏は、総理退任後も、100人を超える派閥のトップである実力者であり、その安倍派の支持がなければ、岸田政権は立ち行かなかったでしょう。
また、異次元の金融緩和を正常化するにしても、急転換は市場の大きな波乱を招きかねません。
まして巨額の財政支出を減らすことなどそう簡単にできないといった「現実」も、ありました。
岸田政権は、アベノミクスを継承するそぶりを見せながら、現実的に変えられるところから少しずつ修正していくしか、選択肢はなかったと言えるでしょう。
「新しい資本主義」という曖昧なキャッチフレーズによる、いわば上書きです。