「強制的に出国させようとしている」 東京オリンピックで亡命
“祖国への複雑な思い”を抱えながら出場した選手もいます。
ツィマノウスカヤ選手
「みんな自分が生まれた国を代表して出場することを望んでいます。しかし、できない状況もあるのです」
今回の大会でクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(27)は、ポーランド代表として陸上女子200メートルやリレーなどに出場しました。
3年前の2021年、東京オリンピックに出場するため来日した際の国籍はベラルーシでした。
競技の直前に…
ツィマノウスカヤ選手(2021年8月投稿)
「IOCに助けを求めます。圧力を受けていて、私を強制的に出国させようとしているのです」
チームの方針を批判したことでコーチから強制帰国を命じられたのだといいます。
当時の報道では、スポーツを国威発揚に用いているベラルーシのルカシェンコ大統領が、東京オリンピックでの自国選手の成績不振に不満を抱いていたとも伝えられています。
そのためツィマノウスカヤ選手は、「帰国すれば危険が及ぶ」としてそのままポーランドへの亡命を決断したのです。
ツィマノウスカヤ選手
「この3年間は精神的にとてもつらいものでした。この間、ベラルーシにいる家族に一度も会えていません。家族のもとには定期的に警察が来るので、心配でなりません」
東京オリンピック以降、一度も祖国に暮らす両親と会えないままポーランドで練習を続けてきました。
この3年の間、ロシアはウクライナへの侵攻を始め、ベラルーシもロシアを支持する姿勢をとるなど、祖国を取り巻く環境は一変しました。
ツィマノウスカヤ選手
「ベラルーシで戦争を迎えていたら陸上選手をやめていたと思います。戦時下の国でナショナルチームの一員を担いたくないからです。だから私は他の国の代表にならざるを得ないのです」
2025年に東京で行われる世界陸上にもポーランド代表として出場したいと話す一方で、祖国への思いを断ちきることはできません。
ツィマノウスカヤ選手
「ベラルーシを離れた多くの人が望んでいるのは、祖国の自由と、愛する人と再会することです。私は多くの人たちに決して諦めてはいけないと伝えたい」