ミサイルが撃ち込まれる様子の刺しゅうのシャツを着て…

「平和の祭典」と称されるオリンピックには、その言葉とは裏腹に、弾圧や紛争の恐怖に直面しながら、大会に出場した選手も少なくありません。

パレスチナ代表としてボクシングに出場したワシム・アブサル選手(20)は、2023年10月、ガザで戦闘が始まり、コーチから直接指導を受けることができなくなりました。

ワシム・アブサル選手
「コーチはガザ出身でエジプトに住んでいますが、パレスチナに来ることが出来ず、トレーニングは大変でした。お互い(練習内容を)電話でやり取りをしていました」

練習もままならない状況を乗り越え出場したオリンピックは、初戦敗退という結果になりました。

さらに気がかりだったのは、大会期間中も続いたガザへの攻撃です。

ロイター通信によると、8月10日にはイスラエル軍がガザ北部の学校を空爆し、子どもを含む100人以上が死亡したと伝えられています。

ワシム・アブサル選手
「オリンピック中も戦争は続いているんです」

ワシム選手は、開会式でパレスチナ選手団の旗手も務めました。

そして、IOCの許可を得て着たというシャツには、子どもたちにミサイルが撃ち込まれる様子が刺しゅうで描かれていました。

ワシム・アブサル選手
「私がオリンピックに来たのは、故郷で起きていることを知ってほしいからです。シャツを着たのもそのため。ガザだけでなく、世界のどこであっても、子どもに対してこんなことがあってはならない」