大分市で去年、19歳の男性が車を時速194キロで運転中、右折してきた車と衝突し相手の男性が死亡した事故について、大分地検は危険運転致死罪を適用しませんでした。遺族が納得できないと訴える中、罪の適用が見送られた要因について検証します。

■「ついうっかり194キロも出す人はいません」“過失”適用に疑問の声


今月14日、カメラの前で悲痛な思いを語る女性。弟を亡くした姉が交通事故の刑事処分をめぐり納得できないとして起訴内容の変更を訴えました。

遺族:
「運転席のシートベルトがちぎれ、体が車外へ放り出されました。いったい、どれほどの衝撃を弟は受けたのだろうかと…」


事故は2021年2月9日午後11時ごろ、大分市里の通称「40メーター道路」の交差点で発生しました。起訴状などによると、当時19歳の男性の乗用車が右折してきた車と衝突。運転していた小柳憲さん(当時50歳)が死亡しました。その後の捜査で男性の車は法定速度の3倍以上にもなる時速194キロで走行していたことが判明。警察は進行が制御困難な高速度で運転した危険運転致死の疑いで男性を書類送検しました。しかし大分地検は先月、最長で懲役20年となる危険運転致死罪の適用を見送り、懲役7年以下の過失運転致死の罪で起訴しました。


遺族:
「なぜ危険運転致死罪を適用してもらえないのかと悔しさと怒りで夜も眠れない日が続きました」


この理由について大分地検の加藤良一次席検事は「法と証拠に照らして危険運転致死罪で起訴するに至らなかった」としています。

交通事故防止に向け全国で活動している井上保孝さんと郁美いくみさん。2人は23年前、東名高速道を走行中に飲酒運転の大型トラックに追突され、当時3歳と1歳の子どもを亡くしました。ドライバーは懲役4年の実刑が確定。この事故をきっかけに危険な運転を処罰する新たな危険運転致死傷罪が制定されました。

大分でのケースについて「ついうっかり194キロも出す人はいませんね。ドライバーたちは悪意があって人を死なせたわけではないから、過失にしか問われないのかっていうのは、私たちの事故のあった23年前に呈していた疑問と全く同じことになる」と話しています。