子どもの食の格差が拡大する今、給食の果たす役割は大きい。子育て支援策の柱のひとつでもある「無償化」について、跡見学園女子大学の鳫 咲子教授が考察する。
《お詫び・初出時の記事中の図3の内容に一部誤りがありました。2023年度の給食無償化の実施状況調査で「実施なし」としていた59.8%について、正しくは3.0%が「実施なし」で、残り56.8%は「無回答」でした。図を訂正して再掲します》
はじめに
コロナ危機後、食材費高騰の中で、子どもの食の格差が拡大している。この格差を小さくする役割が学校給食にはある。給食無償化には、全ての子どもが給食費を気にせずに、安心して給食を食べられるというメリットがある。
本稿では、学校給食の現状を踏まえつつ、無償化の課題とこれからの学校給食のあり方について考える。
給食の歴史
今から70年前の1954年に学校給食法は制定された。法律の根拠がなかった戦前にも、学校に弁当を持参できない子ども、すなわち欠食児童の貧困救済策としてや、子ども一般にも栄養改善の見地から学校給食は行われた。関東大震災後、世界恐慌期を始め、災害・戦争など子どもの食の危機を乗り越えるために発展してきた。
戦前は財源不足により貧困の子どもだけを選別して給食を行った時期もあったが、あからさまな貧困救済として給食を食べる子どもを傷つけないようにすることが重視され、今日のような全員喫食の普遍的な給食が、まず小学校から定着した。