ホームレスたちの働く場も奪う「酷暑」

(山友会の支援活動の様子)

東京消防庁によると、今年7月の熱中症疑い搬送者数は4244人(速報値)にのぼるという。

また、東京都監察医務院によると、今年7月に東京23区で熱中症の疑いで死亡したのは、40代から90歳以上のあわせて123人で、7月に100人を超えるのは、127人を記録した2018年以来。大半は屋内で亡くなっていて、エアコンを設置していたものの使用していなかったケースが79人、設置していなかったケースが28人だった。

屋内にいても熱中症で死亡する危険性がある中、屋外での暮らしは熱中症の危険と隣り合わせだと彼らは感じている。

隅田川周辺に暮らすBさん(45)
「直接は見たことないけど、倒れたというのはよく聞くし、よく救急車を見る」

隅田川周辺の公園に暮らすCさん(70)
「飯も2日くらい食ってねえだろうから(熱中症になりやすい)」

ボランティアの女性
「きょうの活動で、少し前に熱中症で搬送されたというホームレスにも会いました。入院をすすめられたらしいんですが、お金がかかるからと点滴だけ受けたと…。きょうも『体調がよくない』と話していたので、山友会の無料診療所をすすめたんですが…」

油井さんによると、熱中症が持病に影響して体調を崩すホームレスもいるという。

「山友会」副代表 油井和徳さん
「熱中症対策のグッズを配布したいと考えていますが、予算の問題もあってなかなか配布できていないのが現状です。物資が集まったら配りたいですね」

とはいえ、熱中症対策グッズの存在を、そもそも知らないホームレスも多い。冷蔵庫で冷やしたり充電したりしないと使えない対策グッズも多く、家がないホームレスには使いづらく八方ふさがりだ。

「山友会」副代表 油井和徳さん
「ホームレスの人たちも厳しい暑さを感じていますが、『どうにもできない』と考えている人が多い印象で、『死んだらその時はその時』と言われたこともあります」

隅田川沿いの橋の下に住むAさん(72)
「もう諦めちゃってるから。もう本当にどうしようもなくなったら…。毎日のように自殺のことを考えているんですけどね。そこ(目の前)に川があるから飛び込もうかなって。でも、その勇気がなかなかない」

Aさんは笑いながら話していたが、本音に近い言葉だろうと感じた。暑さはホームレスの生きる気力を確実に削いでいる。

そしてこの猛暑は体調面だけではなく、金銭面にも影響を与えていた。ホームレスの男性との会話の中で、「熱中症警戒アラートが出て、『輪番』が止まった」という話を聞いた。

「輪番」とは東京都の特別就労対策事業の一部の通称で、ホームレスたちの貴重な収入源となっているが、暑さにより休止が続いているという。暑さはホームレスの働く場も奪っている。

「山友会」副代表 油井和徳さん
「私たちの支援に来るホームレスの数は増えています。暑さで遠くの炊き出しなどに行けなくなったことや、暑さで『輪番』と呼ばれる日雇いの仕事が止まっていることが影響しているのではないかと思います」