サニブラウンは決勝で9秒8台を狙う

日本の男子100mは97年に桐生祥秀(28、日本生命)が9秒98を出し、9秒台時代に突入した。19年にはサニブラウンが9秒99で走った後に9秒97と日本記録を更新し、小池祐貴(28、住友電工)も9秒98をマーク。21年には山縣が9秒95と日本記録を縮めた。

【日本人選手の9秒台全レース(誕生した順)】
※左から年月日、選手、記録、風、大会、成績

2017/9/9 桐生祥秀 9秒98(1.8) 日本インカレ 1位
2019/5/11 サニブラウン 9秒99(1.8)南東地区選手権 1位
2019/6/7 サニブラウン 9秒97(0.8)全米学生 3位
2019/7/20 小池祐貴 9秒98(0.5)DLロンドン 4位
2021/6/6 山縣亮太 9秒95(2.0)布勢スプリント 1位
2022/7/15 サニブラウン 9秒98(-0.3)世界陸上オレゴン 予選7組1位
2023/8/20 サニブラウン 9秒97(0.3)世界陸上ブダペスト 準決勝1組2位
2024/5/30 サニブラウン 9秒99(0.4)DLオスロ 2位

その9秒台選手たちの中から、東京五輪後に抜け出したのがサニブラウンだった。22年の世界陸上オレゴン大会予選で9秒98で走り、五輪&世界陸上の日本人最高タイムを更新。日本人で初めて、向かい風の中で9秒台をマークした。準決勝も突破して、83年に始まった世界陸上で初の男子100mファイナリストとなり、7位入賞を達成した。

サニブラウンは昨年の世界陸上ブダペストでも、準決勝で9秒97の自己タイをマーク。世界陸上2大会連続ファイナリストとなり、6位入賞と順位を1つ上げた。サニブラウンの強さは、世界一を決める大会で9秒台を出せること。90年以上前の吉岡との比較は難しいが、日本人選手歴代最強と言っていい。

サニブラウンがパリ五輪で期待されるのは、まずは8月4日20時(日本時間5日3時)から行われる準決勝で9秒台を出すことだ。そうすれば92年ぶりの決勝進出は間違いなく実現できる。

さらに、1時間50分と短いインターバルで行われる決勝でも、9秒台を出したい。オレゴンの決勝では4人が、ブダペストでは5人が9秒台で走っている。パリ五輪の決勝で9秒台を出せば、ブダペストの6位以上の順位が期待できる。

だがサニブラウンは、「メダルを取りたい」と、さらに目標を高く設定している。東京五輪は9秒89、オレゴンは9秒88、ブダペストも9秒88が銅メダル記録だ。

「日本記録は通過点。オリンピックでメダルを取るために9秒8台を出します」

蘇炳添(34、中国)が東京五輪準決勝でマークした9秒83のアジア記録も視野に入れて走るだろう。