「2%物価目標」の“現実離れ”した解釈

 このようにロジックが変化し、説明が複雑になってしまうのは、根本にある「2%物価目標」、なかんずくその解釈や運用が、硬直的過ぎるからでしょう。

例え、2%の物価上昇が目指すべき方向だとしても、現在は「安定的・持続的に実現するまで」と、かなり厳格に解釈されていて、「2%を超える消費者物価が2年以上に続いている」現在でさえ、「2%物価目標は達成されていない」と位置付けられているのです。

これは、一般国民の感覚からはかなりズレています。

消費者が毎日インフレに苦しみ、政府が物価高対策に何兆円も使っているのに、政府・日銀の公式見解は、未だ「デフレ完全脱却には至っていない」という位置づけです。

そうなると日銀としては、「金融の緩和状態は続ける」という建前を崩せず、自ずと「緩和の度合いを調整」といったわかりにくい表現を使わざるを得ない状況に陥っているのです。

今回の利上げは、円安の悪影響を考えれば十分妥当なものだと、私は考えています。

それだけに、利上げの理由や今後の見通しについては、より理解しやすい説明が必要だったように思うのです。

物価と賃金の「好循環」実現を願うあまり、悪い物価上昇(第1の力)と良い物価(第2の力)を分けて説明することにも、さして意味があるとは思えません。

「2%を超える消費者物価が2年以上続いているので、目標は一応の達成です。今後は、為替も含め物価、経済の状況を見ながら引き締めていきます」と言えれば、何とわかりやすいことでしょうか。

アベノミクスや異次元緩和といった「過去の看板」に傷をつけないよう気を遣うより、今の国民に説明責任を果たす方が、遥かに大切なことではないでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)