『羽越水害(8.28水害)』は、今から57年前の1967年に起きました。

新潟県北部や山形県に甚大な被害をもたらし、現在の胎内市のエリアでは46人の死者・行方不明者が出ました。家々が流され、多くの人が行き場を失いました。

ストーリーは孫と祖父の会話から始まります。

かつて胎内市で大きな災害はなかったという孫に対し、祖父は2年前にも新潟県北部で大きな水害があったじゃないか、と諭します。ただ孫は「亡くなった人は出ていない」などと言い、聞く耳を持ちません。

その後、孫と祖父は胎内市黒川地区にある『胎内観音』へと向かいます。
そこで親子と出会った2人。そして祖父は羽越水害の記憶を語り始めるのです。

祖父「…私は消防団員でした。堤防を守ろうと土のうを積み上げていました。突然襲った濁流の前になすすべもなく、駆け上がった高台から激しい流れをただ見つめていました。その時です。子どもを抱いていた若い女の人が、流木につかまって波の間に―」

女性「助けて!」

祖父「私と目が合うと、彼女は叫びました」

女性「お願いします、この子だけは助けて!この子だけは!お願い…」

祖父「…何もできませんでした。あっという間に流されて、茶色い水の中に消えていきました」

孫「ウソだろ…」

祖父「あの日、目の前で助けを求める親子を救えなかった…苦い記憶です」