台風による人的被害をゼロへ

 2050年の目標を生き生きとした表情で語ったあと、筆保教授は語気を強めます。「台風による人的被害はまだ起きています。令和元年房総半島台風でご家族が亡くなった人に会ったことがあります。台風研究者として、自分が関係してしまったように思いました。人が亡くなることは、本当に辛いです。建物や物が壊れても直すことはできますが、亡くなった人は帰ってきません。まずは人的被害をゼロにしたいです。」

 2050年の未来の台風防災に期待を膨らませながら、いまを生きる私たちは、強大化する台風とどのように向き合えばいいのでしょうか。筆保教授は話します。「“台風が来ないでほしいから、来ないだろうな”という発想を、そろそろ改めた方がいいかなと思います。一度“必ず台風が来る”と言い聞かせるもう一人の自分をつくって、どう対策をするか考えてほしいと思います。台風と一口に言っても、本当にいろいろな顔があります。雨をたくさん降らせる雨台風や、局地的に強い風をもたらす風台風のように。台風が接近する数日前から早めに情報を入手して、“この台風の特徴はなんだろう”と探って、それに合わせて対策をしてもらいたいです。」