■到着後、急激に押し寄せる不安…「マスク着けているの私だけ!?」

到着翌日からは母が組み立ててくれたプランで、主要な観光地を回ることに。多くは地下鉄での移動だったが、電車内では「意外とマスクしている人がいるんだな」という印象だった。

しかし。観光地に着くと…





マスクを着用している人は本当に、全く、いなかった。

フランス人にとって夏のバカンスは“1年で最大のイベント”で、そのために働いているといっても過言ではないそうだ。
観光地はどこも大混雑だったが、敷地面積1,000ヘクタール(東京ドーム220個分以上)の広大なヴェルサイユ宮殿で、マスクを着けている人間は私だけでは…?と思うほどだった。

ちなみに、滞在中、ワクチン接種の証明書を常に持ち歩いていたのだが、1度も提示を求められず検温もなかった。多くの場所に消毒液の設置はあったが、使っている人はほとんどいなかった。


怖かったのは、ルーブル美術館からエッフェル塔に向かうバスに乗った際のこと。日本の朝の通勤電車並みの混雑にも関わらず、みなマスクはせず、楽し気に会話。どうしても不安になり途中下車してしまった。結果、35℃くらいの暑さのなか、母と30分程の道を歩くことになった。

■数年ぶりに再会の母と“気まずい”雰囲気に

普段の日本での生活では、私自身、屋内や公共交通機関以外ではマスクを外してしまうこともあるが、フランスでは異様に“マスク無し”が怖く感じた。

普段は、ほぼマスク無しで生活している母も、私の滞在中はマスクを着用。こまめな手洗いや消毒を心掛けてくれていた。

ただ、私が事あるごとに「コロナにかかって帰れなくなったらどうしよう…」とつぶやくのに対し、母は「そうは言っても、もう来たんだからしょうがないでしょ」と励ましてくれるのだが、私にはその言葉すら少し無神経に感じられ、互いに無言になるようなことも何度かあった。

マスクを着け電車に乗る母









■「日本人はこんな短い距離でもマスクつけるの!?」

滞在中には、母の知人であるフランス人女性の自宅に招かれ、夕食をご馳走になる機会もあった。女性は妊娠中で、出産予定日はなんと約10日後。「病院で毎日、コロナの検査を受けている」と言っていた。私が日本から来たことや観光地を回っていることなど気にする素振りは全くなかった。

ただ、その帰り道、私がマスクを着けようとすると…

「帰り道のこんな短い距離でもマスクをつけるのね!?」と逆に驚かれた。

他にも、日本へ留学経験がある、母の同僚のフランス人カップルと会った際には、「早くまた日本に行きたいけど、自由な旅行はまだできないんだもんね。いつになったら行けるかな…」と残念がられたのも印象的だった。