キロクアメも待遇改善へ
「記録的短時間大雨情報」についても触れておきたい。
「記録的短時間大雨情報」も「顕著な大雨に関する気象情報」と同様、「気象防災速報」に分類されることになった。気象庁が定義する「気象情報」の枠内から出て、緊急性の高い情報として扱われる。
「キロクアメ」や「キロタン」の略称で呼ばれる「記録的短時間大雨情報」は、「現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることをお知らせする」もので、気象庁が発表する幾つもの防災情報の中で、とりわけ災害発生との関連が強い情報だ。
警戒レベルに直接紐付かないものの、この情報が出ている地域の状況は「レベル4相当以上(レベル5相当の可能性もある)」とされる。
そのような防災上極めて重要な情報であるにも拘わらず、現在は「気象情報」に位置付けられているために、気象状況を解説する情報の一つでしかなく、あまり目立たない存在となっている。
この「記録的短時間大雨情報」について、筆者は常々、毎試合にレギュラーメンバーとして出場できる実力を十分持ちながら、なぜかいつもベンチでスタートの“不遇な選手”と感じていた。
なので今回、役不足な待遇の改善が報告書に明記されたことを大変喜ばしく思っている。
「気象情報」は普通名詞に
「顕著な大雨に関する気象情報」と「記録的短時間大雨情報」は、どちらも重要な防災情報でありながら、現状は一般の人々に“刺さって”いない。
その理由は、これまで記してきたように情報名や情報を伝える仕組みに問題があるからだが、特に「気象情報」に位置付けられていることが大きな原因だと考えている。
気象庁が定義する「気象情報」は、限りなく解説情報としての色合いが濃い。
一般の人々が思い描く「気象情報」の間口の広さと比較すると、情報の意味や性格はかなり限定的だ。
一般には〈普通名詞〉として使われて何の問題もない「気象情報」が、実は気象庁界隈に限っては〈固有名詞〉として用いられている。
そして、〈普通名詞〉と〈固有名詞〉のギャップが埋められることなく長い間放置されてきた結果、情報の送り手と受け手との間に齟齬が生じたままになっている。
今回の見直しで「顕著な…」や「記録的…」は「防災気象速報」に、また「全般/地方/府県気象情報」は「気象解説情報」として整理されることになり、気象庁界隈だけで通用・成立してきた〈固有名詞〉の「気象情報」は姿を消す方向だ。
メディアではなかなか取り上げられない地味な動きではあるが、筆者は重要な改善の一つと受け止めている。














