問題山積の「顕著な大雨に関する気象情報」
「顕著な大雨に関する気象情報」は、線状降水帯に関する情報提供の第1弾として2021年6月に運用が開始された。
当時の気象庁にとって、「平成27(2015)年9月関東・東北豪雨」、「平成29(2017)年7月九州北部豪雨」、「平成30(2018)年7月豪雨(いわゆる西日本豪雨)」「令和2(2020)年7月豪雨」等、ほぼ毎年のように豪雨災害を引き起こす線状降水帯への対応が喫緊の課題となっていた。
そのような状況下で、積乱雲を次々と発生させる線状降水帯がもたらす継続時間の長い大雨への注意を促すことを目的に「顕著な大雨に関する気象情報」が誕生した。
その趣旨は、「大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を『線状降水帯』というキーワードを使って解説する」というものだ。
情報名に見えた役所の限界
趣旨は理解できたのだが、とても奇異に感じたことがある。
「『線状降水帯』というキーワードを使って解説する」と謳っておきながら、情報名(「顕著な大雨に関する気象情報」)には線状降水帯の語句がまったく用いられていないからだ。
理由を探ると、
・そもそも線状降水帯とは何か、学術的に定まっていない。
・情報を発表したとしても、線状降水帯が実際には発生していない可能性もある。
以上を気にして、情報名に「線状降水帯」を使うのを躊躇したことが見えてきた。事実誤認との指摘や誤解を避けるために、いわば“保険”をかけたのだ。
気持ちはわからないでもないが、踏み込んだ情報を出そうとする割にはあまりにも思い切りが悪い。
比較的柔軟に見える気象庁でさえ、こうなのか―役所という組織の限界を垣間見た気がした。
