■ 波佐見町は制度開始時から 5,000倍以上に!!
住吉:
九州での長崎県の立ち位置は分かりましたが、県内の自治体ごとの寄付額はどうなっているのでしょうか?
平家:
県内で昨年度、寄付額が多かった自治体は──
1位が佐世保市で、およそ20億6000万円でトップ。
3位は松浦市で、寄付額はおよそ11億2000万円。
次いで長崎市、島原市がいずれも10億円超となっています。

ここで注目したいのが、2位の自治体で、昨年度はじめて20億円を超えて、県内でもトップクラスに浮上した波佐見町なんです。
ふるさと納税制度がスタートした2008年度の波佐見町の寄付額は37万円でしたので、なんと 5,000倍以上 に増えていることになります。
なぜ、ここまで寄付額が伸びているのか取材しました。

波佐見町に本社を置く株式会社スチームシップ。
5年前から波佐見町の委託を受けて、返礼品の受発注管理やカスタマーサービスなどふるさと納税に関する業務全般を代行しています。
昨年度の寄付額20億円超えの立役者がCEOの藤山 雷太さんです。

スチームシップ 藤山 雷太CEO:
「波佐見町のふるさと納税のブランディングというか、全体的なデザインみたいなところは、(町として)頑張られてはいたんでしょうけど、我々からすると、もっといろいろやりようがあるよね、とは思えたので」
■ 他町には真似できない ”尖った戦略” とは…
寄付を増やす上で藤山さんが取り組んだのが、”波佐見焼を使った新たな返礼品の企画・開発” でした。

返礼品は一般的に、肉や海産物などの食品が人気で、買い替える機会が少ない食器はどちらかというと不向きとされていましたが、藤山さんはそこに目を付けたのです。

藤山さん:
「要は ”波佐見町に寄付しないと手に入らないもの” っていうところが一つポイントかなと思ってて。そうすると他の町とも競合しないですし、正直お肉とかだったらどの産地にも美味しい銘柄とかあると思うので、そういう意味では波佐見町の一つ尖った戦略っていうところは功を奏したかなとは思ってます」
藤山さんは返礼品だけでなく、まちのPRにも力を入れています。
その一つが地域の魅力を伝える記事と、返礼品のカタログを合わせた『波佐見町ふるさとブック』の発行です。

藤山さん:
「カタログショッピング的な感じの目的で作られてる自治体さんだったら結構あるんですけど、このカタログの目的はそうじゃなくて、”波佐見町に来てもらうことをゴール”にしたカタログにしている。一回きりの寄付で終わらずに、波佐見に来たくなる、陶器市に来たくなるとか、そういうところが右肩上がりで伸びてる一つの要因かなと」
昨年度の寄付額は、町の歳入の5分の1を占めるなど、いまや欠かせない財源となっていて、税収以外のメリットも生まれつつあります。

波佐見町 企画財政課 山口 隆太朗さん:
「いま ふるさと納税で出品している事業者さんの中には、個人でやられている窯元さんだったりとか、店舗を持たなかったり、商社さんにお願いするしかないという事業者さんもいる中で、サイト上に出店できたということで販路が拡大されてるということで、事業者さんにとっても本当にありがたい制度かなと思っています」
平家:
スチームシップがふるさと納税業務を手がける自治体は、現在、県内で13の市と町に増えているそうですから、波佐見町で培われたノウハウがほかの自治体でも生かされ、県全体の寄付額増加につながることを期待したいと思います。