特攻隊員に覚醒剤を注射していた元軍医『本当にかわいそうで仕方ない』
その答えを知る人が新潟県にいました。蒲原宏さん(98)は、1945年、多くの特攻隊員が飛び立った鹿児島県にある海軍の航空基地で軍医をしていました。そこで「出撃前の特攻隊員に覚醒剤を注射していた」と証言します。
(蒲原宏さん)
「僕は初めはヒロポンとは知らなかったわけですよ。黒いケースに10本アンプルが入っていて、説明書にはただ『筋肉内注射しろ』と。『出発前にやれ』という命令だけでよくわからなかった」
上官の命令で約300人の特攻隊員に覚醒剤とは知らずに注射をしていたといいます。その目的は…
(蒲原宏さん)
「眠らないためということが主目的でしたね。戦闘力というか興奮させるといいますかね、そういうものを増進させることが目的だったようですね」
鹿児島の基地から戦場の沖縄までは戦闘機で3時間ほどの距離があり、夜間の出撃で眠ってしまわないようにする狙いがあったといいます。
注射された特攻隊員の多くは平静を保ったまま出撃しましたが、中には…
(蒲原宏さん)
「真ん中あたりに指揮官が乗るわけですよ。それが日本刀を振り回して滑走路を飛んで行くのを見たことがあったが、今考えると(覚醒剤で)興奮したのかなと思うけど、わからないですね」
特攻隊員に贈った覚醒剤チョコの存在も知っているのでしょうか。梅田さんが書いた絵を見てもらいました。
(蒲原宏さん)
「これは見たことがありませんね。(私のもとには)実際来ていませんね。陸軍はチョコレートに(覚醒剤を)入れたなんてことを言っていたけど、海軍はもっぱら注射だけでしたね」
特攻隊員に使われた記録はありませんでしたが、陸軍では覚醒剤チョコを作っていたというのです。
一方で蒲原さんは今も特攻隊員に注射したことを後悔しています。
(蒲原宏さん)
「本当にね、ヒロポンを打たれて死んだ人に対しては申し訳ないと思いますよ。内心忸怩たるものはありますね。今でも時々夢を見ますよ。どんな気持ちだったか、本当にかわいそうで仕方ないですよ」