パリ五輪に向けて明確になった練習でやるべきこと
今回の日本選手権は優勝すればパリ五輪代表に内定した。優勝だけを考えたら、ここまで前半から攻めるレースをしなくてもよかったかもしれない。その理由を問われた豊田は次のように答えた。
「(内定を決めて)パリ五輪に出場することになった場合、前半から飛ばすレースが必要になります。そういうレースを試す試合が今後ないので、日本選手権の決勝が絶好のタイミングでした」
昨年までは前半飛ばすレースをすると、終盤で失速することも多かった。今年5月3日の静岡国際でも5台目通過が21秒15と、日本選手権決勝に近い速さで前半を試したが、終盤の力がなく筒江海斗(25、スポーツテクノ和広)に0.04秒差で敗れた。5月19日のゴールデングランプリ(以下GGP)は48秒36で優勝したが、5台目通過は21秒64とスピードを抑えた。
日本選手権予選は5台目の入りが21秒57と、GGPと同じ前半の抑え方をした。そこで余裕が大きかったことを確認して、決勝は5台目通過を21秒00まで速めたが、今回は後半のペースダウンを最小限にとどめて47秒台を出してみせた。
パリ五輪では「決勝進出」が目標となる。そのために「このまま調子を崩さず、47秒を再現させる」ことを目指す。もちろん、47秒99でいい、ということとは少し違う。
「今日やったレースを再現する勢いで、47秒台後半や47秒5台まで、タイムを縮めていきたい」
高野コーチはそのための練習のイメージをすでに描いていた。「まずは今回の前半のタイムを楽に行く練習をして、後半に余力がある状態を作りたいですね。8台目からフィニッシュまでが14秒1になるイメージです」
次への課題を明確にした豊田は、決勝を見据え初の五輪に挑む。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















