安倍元総理の国葬…反対の声も多いが『後にはひけない』理由

ーーー安倍晋三元総理の国葬ですが、JNNの世論調査(8月6日~7日に実施)では安倍元総理の国葬に賛成は42%、反対は45%と非常に拮抗している結果でした。反対の声が多い中、予定通り行われるのでしょうか?
「これは今さらやめられないんですね。国葬に関する法律は実はないので法的根拠がないじゃないかという声も聞くのですが、実は『閣議決定』されているということなんですね。政治の世界で閣議決定は大変重いものなんですね。そもそも閣議決定というのは内閣の意思決定を決めるという閣議です。実は憲法でも、総理大臣だけで何かできることはほとんどないんです。『閣議あるいは内閣がやる』って憲法に書いてあることは、総理大臣1人ではなく、内閣・閣議で大臣たちがみんなで集まって決めましょうと。これが閣議決定というものなんですね。閣議決定で国葬をやるということになった以上、これはなかなかやめられない。閣議決定をひっくり返すことは大変難しいです。例えば政権交代して全く新しい政党がトップになった時に、前の閣議決定を見直しましょうやめましょうということはあるんですが、今の自民党内閣で岸田さんが総理大臣の下で閣議決定を取りやめることはまず考えられないです。むしろ責任問題になってしまうということなんですね。なので9月27日に日本武道館で行うということは予定通り進むということです」
ーーー多くの税金が使われる中でなぜ慎重な審議をせずに、閣議決定まで2週間というスピーディーな決定をしたのでしょうか?
「安倍元総理が銃撃されて殺害されてしまった衝撃ですね。あの衝撃の中でどうしたらいいんだろうかという思いの中で、国葬をするというのが一挙に決まってしまったというところだろうと思います。岸田さんは直後に記者会見で涙を浮かべていました。『何かやらなければいけない』という思いがある一方で、アベノミクスからの脱却などを含めて安倍さんや安倍派という清和会の人たちが岸田さんのやり方に不満を持っている人たちもいるわけですね。そうすると『何をやってるんだ』と言われるかもしれない。『国葬しますよ』と言えば安倍派の人たちも『それはいいじゃないか』と言って岸田さんに対して反対できないようにする。9月27日に国葬ってことは、それまで喪に服するんですね。実は今、政治の世界も喪に服していて、岸田さんを表立って批判するということがないんですね。岸田さんにしてみれば、そこで自分に有利なことをしていこうじゃないかと、時間をとったというところもあるんだろうと思いますけどね」
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「これまで国葬といいますと吉田茂元総理が亡くなった際に行われました。吉田茂元総理に関しては、例えばサンフランシスコ平和条約あるいは日米安保条約を締結した。また『吉田学校』と言われるように、例えば佐藤栄作など次々に政治家を養成していったという実績を残しました。さらに言えば、吉田元総理は亡くなった時点では政治家ではありませんでした。なので歴史的な評価が定まっているから、この人に関しては国葬でいいじゃないかということになったんですね。しかしこの際にも国葬反対の声がありました。私は高校生の時だったからよく覚えているんですけど、この国葬が是か非かって日本国内で議論があったんですよね。一方で、その議論があったせいかどうかわかりませんけど、佐藤栄作元総理の時には国葬じゃなかったんですね。『国民葬』という形で政府・自民党・国民の有志が共同で費用を支出しましょうと。国も実はお金を出したんですけど国葬にしなかったんですね。一方で佐藤栄作元総理は沖縄返還を実現したわけですよね。あるいは非核三原則を提唱してノーベル平和賞を受賞しているので、これだけ実績のある人でも国葬ではなかった。となると今回の安倍さんの国葬は、佐藤さんですら国葬じゃなかったんだから、現役政治家で賛否両論ある人を国葬にしてもいいのかという批判の声は出てしまうということなんですね」














