◆弁護側「勇気のいる証言」

弁護側の報告集会(福岡県弁護士会館)

公判終了後の会見で、弁護側は、交際相手の証言は2点において重要な意味があると説明している。

(1)「日本に来る前から『妊娠したら帰国させられる』という話を何回も聞いていた」とする証言

(2)事件後、交際相手が監理団体から、「質問されたら『妊娠したら帰国させる』などといった内容は監理団体から言われたのではなくインターネットで検索したというふうに説明してくれと言われた」とする証言

グエット被告の弁護人 島翔吾弁護士「ベトナム現地の送り出し機関だけではなく、日本の監理団体がベトナムに赴いてそういう説明を繰り返ししていたと。”口止め”のようなことを言っていたという事実が法廷で明らかになったのは非常に大きな意義があった。非常に勇気のいる証言だと思う。今まさに技能実習生として働いている交際相手の発言ですから、監理団体、勤務先から不利益な取り扱いを受けるおそれもあるわけです。そういった危険を顧みずに勇気をもって証言してくださった交際相手の方には心から感謝したい。この証言が裁判を一歩前に進ませてくれたと考えています」

グエット被告の主任弁護人 池上遊弁護士「死産のお子さんをつくってしまったのは私たち日本人の責任だと思います。こうした技能実習制度をここまで温存したことが、彼女の孤立死産を生み出したということでもあります。この死産した男児の遺骨、魂に報いるためにも頑張っていかなければならない」

◆死産した子の扱い 2023年最高裁の判断

技能実習生をめぐっては、2020年、ベトナム人技能実習生(当時24歳)が、死産した双子の遺体を段ボール箱にいれるなどして遺棄したとして死体遺棄罪に問われた。1審2審とも有罪判決を言い渡したが、2023年3月、最高裁判所は1審2審判決を破棄し、無罪を言い渡している。

予期せぬ妊娠と出産ののち、罪に問われる女性があとをたたない。グエット被告はなぜ孤立出産にいたったのか。家族を支えようと日本へやってきた若い女性をこうなる前に救うことはできなかったのか。法廷で流した涙の裏には、どのような思いがあったのか。今後も、法廷で語られる言葉を記録し、伝えていく。

RKB毎日放送 記者 原口佳歩