「結婚」はしたいけど、正式な「プロポーズ」もして欲しい―。国債の買い入れを減額する方針を打ち出した日本銀行の胸の内の苦しさを、専門家はこう表現します。今回の日銀の方針は、円安や住宅ローンなど我々の暮らしにどう影響しそうか、注目点を聞きました。
なぜ国債が焦点に? 日銀の思惑とは
日銀は14日の金融政策決定会合で、月6兆円程度の長期国債買い入れを減額する方針を決めました。日銀の会合では3月のマイナス金利解除以降、政策金利(短期金利)の引き上げが注目されてきました。なぜ今回は国債が焦点となったのでしょうか。
背景には5月13日に日銀が国債買い入れ減額をサプライズ的に実施して、債券市場で長期金利が急上昇したことがあります。このことが日銀が長年、続けてきた市場へのお金の大量供給、いわゆる量的緩和政策を終わらせるのではという憶測を生み、市場に不透明感が広がっていました。
大和証券チーフエコノミストの末廣徹さんは今回、日銀は国債に関心が集まっている機会を利用して、追加の金利引き上げを行うまで「時間稼ぎ」をしたい思惑がある、と推測します。
「本来は賃上げと物価上昇の好循環が起きているのを確認して利上げをしたいはず。ただ、(生活を圧迫している)円安の流れを止めるために世の中から催促されて利上げするのは望ましくない。だから利上げから目線をそらすための国債買い入れ減額なのでは」と末廣さんは読み解きます。
この話を末廣さんは結婚に例えます。「結婚(利上げ)はしたい、でも勢いでするのは嫌なので、ちゃんとプロポーズ(好景気の確認)はしてほしい。だから『ちょっと今仕事が忙しくて…』と別の話を持ち出したのが今回の国債買い入れ減額だと思っています」
