顧客が銀行窓口に行かなくなった
──金融行動が変わったという部分で一つ、銀行に行かなくなったなと思います。
最近そうですね。今、数字で申し上げると10年前から4割減というのが、今、店舗にお見えいただいてる方々。
今までの我々の取り組みの中でもリアルとデジタルの融合がやっぱり非常に重要なポイントで、お客様の手の中に、個人のお客様だとかなりもうスマートフォンの中に日常の金融を満たすための準備ってのができている状況なんですね。
これを法人の分野にも拡張すべきだし、個人の分野にはもっとさらに利便性が高くて、UI・UXに優れていていつでもどこでもっていう感覚をご認識いただくっていうことが今の変化に必要なこと。
一方で、こうやって、今日もお会いさせていただいてますけども、目と目を見てお話をさせていただくことで、出てくる新しい価値もあります。
それから、金融には深いソリューションを提供しなければいけないものはあると思っていまして。例えば、法人だとまさにその会社さんの経営戦略に根ざしているものだとか、事業とか資産の承継だとかっていうのは、デジタルで完結できるものではなくて、1to1でそれぞれのご事情をしっかりと理解した上で、正しいそのソリューション、最高のソリューションを提供していくというのは人間が持つ力、金融が深いところで持っている力を、リアルの局面で持っていくっていうことが重要。
一方で、日常の金融っていうのは明らかにほぼ100%がデジタルとデータに置き換わっていくのだと思ってます。日常の金融をデジタルで支えながら、特別なリアルな瞬間っていうのを、フェイストゥフェイスで深いソリューションで提供していくっていうのが、次世代のリテール金融の中で必要なことだと思ってますし、それがりそなグループが目指している新しい姿だと思っていますので、これを何とか成し遂げたい。
そのためにさっき申し上げた、今、少しフォローの風になってきているときだからこそ、構造改革を推し進めて我々がいち早くそのステージに立てるような流れを作っていくことが大事だと思う。
対面・リアルだからこその価値

──リアルだからこそという部分が大きくて、店舗数もすごく多く抱えてらっしゃるっていうのは、それが強みになる部分ではあります。
今、800を超えるリアルチャネルを持っていて、有人チャネルネットワークっていうものが持っている価値っていうのは我々はあると思っているんですけども。
ただ、10年前、20年前の価値ではなくて、今、変化が激しい時代に、もう一度、地域に営業店がある意味っていうのを、再定義するということが必要。
それは、データとかデジタルで武装されていてサポートをされていて、バックヤードが基本的にそのデジタルに置き換わっていくっていうことを、起点に営業店で行うお客様の困り事、ですから、お客様の未来を少しでも豊かなものにしていくために我々が必要なことを、しっかりとサポートしていく。
フェイストゥフェイスでというところが、営業店が、地域にある意味の一つだと思っていますので、そこに向けて人材の質・量を上げていくことも必要だと思いますし、コンサルティング力、ファイナンス能力を上げていくことにも繋がりますし、バックヤードは、その業務のプロセスが解体再構築されて、違った形でサポートされているということを作り上げていくのが次世代リテール金融で必要なことだと思っていますのでこの両面を同時に行っていくことが重要なことだと思います。
──日銀の調査でも、企業側の声として、大規模な金融緩和で金利が下がった分、資金を借りやすくなった一方で、銀行側の省人化などで、人を減らしたから、借りやすくはなった、量を安くはなったけれども、コミュニケーションの質の部分が希薄になったという声を上げていらした方がいました。そこの部分も今ちょうど転換点なのかなというのは今お話を伺ってて大変しっくりきました。
そうですね。営業店が持つ価値だとか、人が持っているその力っていうものを、そのデジタルとデータっていうものを融合させていくことが必要。デジタルはデジタル、それからリアルはリアルという考え方ではなくて、表裏一体、一体化しているということが重要で、これがリアルとデジタルが提供しているお客様の接点での価値っていうのを高めていくことが必要だと思うんです。これを何とか早く成し遂げたいと思っています。
政策保有株は3分の2を処分

──少し話が変わりますが、政策保有株の件について、3分の1にまで減らすと表明していますが、その分出た売却益を今後どういうふうに生かしていこうと考えていますか。インオーガニック(外部への資本投入)のお話も決算会見でされていましたけれども、そこを改めてお聞かせいただけますか。
今は3分の1になるというふうに表現していただいたんですけど、我々の認識は違っていて、2003年のりそなショックのときに、実は政策保有株式って簿価ベースで1兆4000億円持っていたんです。
今の目標は「2030年に純資産ベース時価対比10%にする」っていうことなんですけど、これは簿価ベースで申し上げると870億円になるということ。
2003年に1兆4000億だったものを27年かけて、870億円まで縮減していくということ。
この過程の中で、我々は政策保有株式の売却という文脈で語られますけども、お客様側にとってみると、大事な資本政策の一環だったということが、これが実は表裏一体になっているものなので、お客様にとっては非常に重要なお話であるはずで、なので我々はこれまで難しい交渉ではあったんですけども、お客様と膝詰めでお一方、お一方とずっとこのことについてお話をしてきてそれが今現時点で切ると2616億円まで簿価ベースで減少しています。
これを今、世の中の変化が激しくて、もう一度、解放する資本を使って、中堅・中小企業・個人の皆様の円滑な資金提供を支える資本として活用したいということもありますし、それからコンサルティングを強化していくってことにも使いたいですし、それはさっき申し上げた我々の構造改革、この構造改革も次のステージにお客様にもっと良い価値を提供するための投資であるべきだと思っています。
今、ご質問いただいたインオーガニックなところもこれもお客様の多様化する、あるいは高度化する複雑化するニーズを我々グループが持っている知見やノウハウだけではなくて、もっとスピーディーに良い形で結び付くためには、我々にない異業種の方々の知見やノウハウと掛け合わせることで新しい価値観を提供できるっていうことに繋がっていくと思いますので。いずれにしても、考えていることっていうのは、もう一度我々が提供できる価値だとか顧客体験っていうのを高めていく。
それはもう1回我々が目指しているリテールナンバーワンを目指すことでもあるし、それからお客様を最終的にもう一度フルにサポートをしていくための原資にしていくっていうことが本来の我々の思いですので、この3000億円近い資本開放を使って我々が進化していく、それをお客様のために進化していくっていうことに繋げていきたいと思っています。