物価高に賃金が追いつかない状況が、ついに過去最長となりました。今後、春闘での交渉結果を受けた賃上げが、徐々に実現することが期待されるものの、「スーパー円安」の影響もあって、実質所得がプラスになる「好循環」は、さらに遠のいています。

実質賃金は24か月連続マイナス

厚生労働省の発表した3月の毎月勤労統計によれば、3月の現金給与総額、すなわち名目賃金は、前年同月比で0.6%増加しました。

しかし、消費者物価(除く帰属家賃)が3.1%上昇したことから、実質賃金は前年同月比で2.5%の減少となりました。

実質賃金のマイナスは、これで24か月連続のこと、比較可能な1991年以降では、リーマンショック時を超え、過去最長となりました。

「100年に一度の危機」と称された時よりも、懐具合は苦しいのですから、大変なことが起きていると認識すべきです。

名目賃金は春闘の賃上げ率ほど伸びず

実質賃金がマイナスから脱せないのは、物価上昇率が依然高いだけでなく、名目賃金=実際に支給された、あらゆる給与の総額が、期待されたほど伸びていないからです。

まだ3月分の統計が速報段階なので、23年度の数字は出ていないのですが、暦年の2023年通年の名目賃金は前年比で1.2%しか増加していません。

23年には春闘で3.58%(連合集計)と、30年ぶりの高い賃上げ率が実現したにも関わらず、春闘集計の3分の1程度しか、名目賃金(現金給与総額)に反映されていないわけです。