■「もう宇宙ステーションに人が送れなくなる・・・」
今年、若田光一さんが船長を務めた国際宇宙ステーション(ISS)。アメリカ、ロシアなど15か国が参加、運営している。滞在する7人の宇宙飛行士のうち3人がロシア人だ。そのロシアが離脱した場合どんな影響があるのか、長年ISSに携わった専門家に聞いた。
日本宇宙少年団 上垣内茂樹 理事
「宇宙飛行士の作業ひとつとっても(ロシアが抜けたことで)そこで出てくる影響を回避するため余計な作業やメンテナンス作業が増える分、実験に使える時間が減ってくる。(中略)宇宙船ひとつとってもロシアのソユーズで人が運べる、西側のクルードラゴンで人が運べる。それがソユーズがなくなりクルードラゴンだけになる。もしトラブルがあって1年2年打ち上げられないってなると、もう宇宙ステーションに人が送れなくなるという事態になります」
協定により2024年までは現状が守られるが、それ以降ロシアは、独自の宇宙ステーション完成をもってISS離脱としている。懸念されるのは、今年10月完成を予定している中国の宇宙ステーション「天宮」にロシアが相乗りすることだ。
ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所 隈部兼作 所長
「ロシアが今後生き残っていくためには、中国との関係を強化していかなければならないと追い込まれている段階。2024年までに独自の、っていうのは予算的に難しいでしょうから、そうすると中国との協力っていうのは出てくるんじゃないかって・・・」
■G7はエネルギーや食糧への“投機”を禁止せよ
西側の制裁に対抗するロシアの様々な“生き残り策”。長い目で見るとロシアが苦しくなると見られているが、途上国など長い目で見ることができない国のほうが多い。現にいま制裁に参加している国は少数だ。ようやくウクライナから穀物輸出が再開されたが、それもまた不透明だ。どうすればこの戦争で、ロシア包囲網を広げ、有利に展開できるのか。長年ロシアの経済を見ていた隈部氏は、西側の、無作為を強く批判した。
「制裁をすればエネルギー価格が上がる。穀物が大変なことになる。こうなることは予見できたんです。これに対してG7諸国は世界の経済・社会を安定させることをやっておかねばならなかった。いま慌てていますが、こういう非常時ですら、エネルギーも穀物も“投機”の対象になっているわけです。エネルギーと食料は“国際的公共財”だとして『投機は許さない』ということくらいしないといけない。そうしないと、穀物の量は出て来ても価格は下がらず買えないところも出て来てしまう。途上国に配慮しないと制裁の輪は広がっていかない」
(BS-TBS 『報道1930』 8月2日放送)