■「今年1月から6月までのロシア財政は黒字なんですよ」
経済状況からこの戦争を見てみると、ウクライナは戦争が始まって以来毎月6500億円の赤字を出す一方、税収が半減している。財政赤字は国債を発行するなど財政ファイナンスで賄っている。とはいえ本土が戦場となる戦時下において財政が危機的状況になるのは当然だ。
ウクライナには各国から5兆円近い支援も約束されている。問題は、ロシアだ。
ソ連時代からのつながりを含めロシアと50年付き合ってきたロシア経済の専門家、隈部兼作氏は言う。
ロシア・ユーラシア政治経済ビジネス研究所 隈部兼作 所長
「ウクライナは単独ではない。G7含め世界がついてますからあまり財政がどうということじゃないです。でもロシアの場合はですね、我々色々調べているんですが財政における数字っていうのをほとんど発表していない。日本からロシアの財務省にアクセスできないし、ロシアがどこの国と貿易しているのかも出てない。だから逆側から調べるほかない。(中略)面白いことにこういう侵攻をしているにもかかわらず、今年1月から6月までの財政は黒字なんですよ。この半年で歳出も歳入も国家予算の5割。こんなことあり得ないんですよ。」
つまり、戦争継続中にもかかわらず、国家予算を半年で半分使って、同額の収入があったという理想的な財政が数字上残っているのだ。
どこまでが信じられるデータなのか、まったくわからない。例えば公表されている数字では、ロシアの国家予算は約45兆8000億円。うち軍事費は、7兆円とされている。国家予算の15%強と考えるとかなりの軍事費だが、戦争中と考えると少ないようでもある。
東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠 専任講師
「ロシアの軍事費は、はっきり公表されないので各種資料から類推してこのくらいだろうと。ロシアは兵隊の給料も武器も全部自前なのでルーブル払いできる。燃料もそうです。なので実際の購買力でいうとかなりある。どのくらいかも諸説あるが、大きめの数字で1000億ドルから2000億ドルくらい。つまり20兆円くらいの使い出はあるんじゃないかと。」
戦時中の財政状況はいつの時代もトップシークレットだ。しかし、戦争が長引いて財政が悪化しないで済むはずはない。アメリカはこう見ているという・・・。
明海大学 小谷哲男 教授
「主流の見方は、今回の侵略によって長期的にはロシアの経済力の低下が加速すると見ています。もともとロシアは国力が衰退していた。その衰退が早まる。西側の制裁も効いている。(無傷だと言っている)軍需産業も部品が入らず困っている状況だと」
中長期的にはかなりの痛手は避けられないロシア経済。そのロシアが、国際宇宙ステーションから撤退するという。これが今西側にとって新たな問題となるかもしれない・・・。