小さな成功に固執しない

石井:走る街によって、気持ちが上がるというかね、あるわけですね。

大迫:今回、コースの概要を見たんですけど、特にスタート、フィニッシュ辺りは、街を走るっていう風に聞いたので、その辺も楽しみな部分かなとは思いますね。

石井:石畳の古いヨーロッパの景色と共に戦いが始まっていく訳ですもんね?

大迫:そうなんですよね。走りやすいコースって別にオリンピックじゃなくても走れるというか。なので、正直石畳とかアップダウンがあるのは走りにくいんですけど、でもこういったオリンピックじゃないと走れないコースではあると思うので、その辺の他にない難しさもありつつ、それが逆に自分のモチベーションになるっていうのは、多くの選手がある部分じゃないかなと思います。

石井:やっぱり走りにくいっていう中だと、タイムというよりは、勝ちに行く。勝ちに行くレース、これは大迫さんにとってはどういうものなんですか?

大迫:一昔前だと勝ちに行くレースと速いレースってちょっと分かれていたんですけど、今は割とそれがあんまり差がなくなってきているので、どういうレースになるかちょっと分からない部分。ただ、勝負を分ける要因が多くなるっていうことに関しては、僕にとっては非常にプラスのことなんじゃないかなと思います。

石井アナウンサーと大迫選手

石井:東京オリンピックでは 6 位。御自身の中でも6位以上っていうね、コメントもあったんですけど。

大迫:ありましたっけ?そんなの?

石井:言っていたんですよ(笑)

大迫:何か最近も良くないなと思っているのが、東京オリンピックもそうですけど、過去の良いレースをした自分みたいなのが自分の周りにあると、どうしても今の自分に集中できないというか。色んなマラソンで良かった自分、悪かった自分、まあまあな自分みたいなのがいると思うんですけど、そこをあんまり考え過ぎると今の自分に集中できなくなってしまうので、特にどういうプロセスを経て、ここに出たかっていうのは大事ですけど、それにこだわり過ぎずに今日、もしくは今週、今月どういったベストなトレーニングが目標に向けてできるかみたいなのに集中してるのが現在地点かなと思います。

石井:アスリートによっては自分の良かったものを何度も見返したりとか、いわゆる一つのイメージトレーニングをしたりすると思うんですけど、大迫さんはそういうことしないんですか?

大迫:良かった自分が適用するのって、オリンピックの金メダリストだけだと思うんですよ。どの枠で考えるかによると思うんですけど、日本記録を出した(18年と20年に2度記録)とか、このレースで良かったみたいな、そういう小さな成功に固執している人は結構多いと思うんですよね。自分自身もそういうふうにはなりたくないなと思ったんで。常にチャレンジャーである以上は自分自身に執着しないで今の練習に集中しようと思っています。

石井:さらっとおっしゃいましたけど日本記録を出したことは小さなことなんですか?

大迫:世界と比べて考えた時にその差ってほんとに縮まっているのかとか、どこの山をのぼっているかによると思っていて。僕は高校生の頃から世界一の山を登っていこう、わかりやすくいうとエベレストに登っていこうと、日本から準備をして海外に出て。何メートルまで到達したかわからないですけど、でもそういう視点がない人って富士山が世界一の山だと思っているので。富士山を登っていけばその先のエベレストを登れると思っている。ただ景色がキレイで、でも多くの人が登れる山は価値がなくて。そういう視点の気づきというのは常に持っておかないといけないなというか。自分がどういった方向に歩いているか非常に大事だなというのは自分のやりたい海外でのトレーニングを活発にやったりという中で色々と感じることが多かった。