■分配は「コスト」ではなく「投資」 課題と思っていたものは実は“チャンス”なのではないか

甘利氏:
分配は「コスト」ではない、分配は「投資」なのだという考え方です。人への投資、スキルアップすれば成長力になるし、賃上げを毎年していけばモチベーションが上がる。スキルアップ、モチベーションアップって成長の力ですから、この分配はコストではなく投資なのだと。自分への投資、設備を新しくする、研究開発をする、自分への企業投資ですよね。それから、課題があるとこれを解決するのにコストだと、課題は障害物だと思いますが、違うと。課題を解決すればそこから新しい市場が開けると。一番乗りができますよ。
だから課題はチャンスではないのかと。課題があって、ありがとうという。課題があって、困ったではないと、その様に気持ちを変えていって、今までコストと思っていたのは実は投資であって、課題と思っていたのは、いわば新しい市場へのチャンスなのだと。それに有効にお金を使ってくれというのは新しい資本主義で、だからアベノミクスの発展系で、具体的に成長戦略に対して進まないことに対して具体的な課題に対する対処法を提示したというところだと思うのです。
ーーただ、分配って言うと、毎日の暮らしが苦しい方は「やっぱり分配を先に」と思ってしまって、その前にその分配の原資をどうするかという話までなかなか思い至らない。新しい資本主義って岸田さんがおっしゃるけど、これ一体何なのかがわからない。

甘利氏:
要するに分配は成長のエンジンですよと。「分配は成長する果実を分けてあげる慈善行為」じゃなく、「企業にとって分配はむしろ成長のエネルギーなのですよ」と。「経営者は頭を切り替えてください」と。
だって日本だけじゃないですか、現金の内部留保だけどんどん積み上がって、この1-3期でもまた3割積み上がっているんですよ。設備投資はコロナ前までまだ届いていないのです。世界はコロナ前よりも遥かに投資が進んでいます。日本はただ守っているだけだと。
だから私は、経団連に行っても相当きついことを言います。従来は経団連が経済政策として一番信用する政治家・甘利明だったのですが、多分、今や一番煙たい政治家・甘利明になっているんですけど。私は必要なことを言っているのです。比べてみてください、世界中のトップ企業はいくら投資していますかと。ものすごい金額ですよ、内部留保はどんどん新しい成長に向けていると。内部留保は賃上げに向けている、内部留保はスキルアップに向けているじゃないか。日本だけ内部留保がそのまま積み上がっている。これを業界用語で“ブタ積み”って言いますよね。なんの役もしないでね、積んでいるだけ。だから積んでいるお金を働かせようということなのです。

ーーGX(グリーン・トランスフォーメーション)の財源をどうしようかと、スタートしましたね。民間だけではどうしようもない、やはり国がどのくらいお金を出すかが重要。そう思いませんか?
甘利氏:
赤字公債を無制限に出していくらでも調達するということは、その借金は子や孫の世代で返さなければいけないわけですから。ただその返し方で財政再建派と成長派の相互がありました。どんどん歳出をカットして節約して、それから増税をして再建をするのは間違っていると思います。安倍さんの考え方は、経済を拡大していって赤字を吸収していくという考え方です。これは正しいと思います。だから成長なくして再建なしということなのです。
ーーやはり最後は財源、スタートアップ10兆円とか言われてますよ。それをどこから取るか、GXもDXもお金がかかるし、なおかつ防衛費をどうするかという話もあるし。(甘利さんは)自民党税制調査会の顧問でもありますよね。
甘利氏:
近いうちの辻褄を合わせるのと、遠い辻褄、時間をかけた辻褄、それがもたらすリターンで全部できます。ただイニシャルコストをどう持つのかをこれからよく相談したいと思います。即、赤字国債というわけにもなかなかいかないので、何か工夫しなければいけないと思っています。
【CS放送TBSNEWS「国会トークフロントライン」7月29日放送、 聞き手・川戸恵子】