■安倍元総理の“国葬”と“追悼演説”「静かな環境でやるべき」

ーー今回、国葬と急に決まりましたね。野党は反論していますがこの辺りはどうお考えですか?
甘利氏:
世界中がこれだけ感謝し、その死を惜しみ、彼の業績に称賛を贈る。こんな現象は今までないですよ。国葬を行えば世界中の国家元首を含めた指導者が来られるわけですよね。それ自体、日本のプレゼンスはドンと上がります。ご存命のときもプレゼンスを上げ、亡くなった後もプレゼンスを上げるという方だったということです。私は、国を挙げてみんなが弔意を表する機会、あるいは世界中が表す機会を政治的に掻き回さないほうがいいと思っているんです。

ー今話題になっている追悼演説ですが、安倍昭恵夫人が甘利さんにやってほしいと?
甘利氏:
こういう時は国対の間で段取りを決めます。国対委員長から内々に「こういうご意向がありますけれども、そうなった時にはお受けされますか」という打診があったのです。「そういうご要請があれば当然、もちろんお受けしますよ」と内々の事でお返事だけしました。後はもう一切、私は口を閉ざしていましたし、私から話が出たということは1ミリもなくて、国対のそういう段取りを野党と交渉する中で話が出てきたのだと思うのです。
やはり弔意を国内外、議会を代表して追悼の演説をするというのは静かな環境でやるべきだと思っています。最長の期間、国のトップをされて世界中が敬意を表する人の追悼ですから、静かな環境でやるべきだと思います。
■“アベノミクス”と岸田さんの“新しい資本主義”は違うものではない

ーー財政問題でも経済政策でも、安倍さんが(総理を)お辞めになった後でも、岸田さんといろいろ齟齬があるように見えますが?
甘利氏:
実はそれはないのですけれども。「アベノミクス」と「新しい資本主義」は違うものではないのです。アベノミクスは一の矢、二の矢、三の矢で、金融緩和、需給ギャップを埋める財政出動、これはうまくいって。その両者が相まって円レートが実力を超えているような高いレートから、実力に見合った100円ちょっとぐらいになったわけです。そうすると、輸出企業を中心に企業が収益をドンと上げて内部留保ができた。
成長戦略というのは、その内部留保を新しい成長分野に、あるいは技術開発に、設備投資に投じてくれと。これがうまくいっていないのですけれども、これは民間側の努力で、そのために賃金が上がるような税制とか投資が進むような税制とかいろいろ用意したのです。ところが、企業の方では現預金が積み上がるだけで有効に活用されていない。ここが一番問題で、それがもっと有効に進むようにやろうというのが「新しい資本主義」。つまり「成長」と「分配」の好循環だけれども、その際、分配というのは「コスト」に見られがちなのです。