「この子を残して先に死ねない」 支える家族の思いは…
一方で、家族の思いは少し違う。
墨田区精神障害者家族会の会長を50年ほど務めている三浦八重子さん(83)によると、「いつかは自立してほしい」と願う家族は多いそうだ。
子どもが病気になった当初は親もわけが分からずショックで希望を失うこともあるが、そのうち「何でもしてあげたい」と考えるようになり、それが30年も経てば「この子を残して先に死ねない」との思いが強くなるという。
できれば工賃も上がってほしいし、一般就労をして結婚や子育てもしてほしい──。家族は「病気になる前に何かできなかったか」と後悔して、責任を感じて、自立できるように何かしら残してあげたいと奔走することもある。

三浦さんは1980年からB型事業所にも携わっている。
面倒を見てくれる家族が亡くなった後、孤立しないためにも事業所のような場所とつながりを持つことは大切だと話す。一人暮らしを迫られる50〜60代の利用者も増えているそうだ。
工賃については「studio753のような売れる自主製品を作れる事業所はいいが、孫請けの軽作業だと単価が1円以下のものもあるし、知的や身体も含め重度の障害者が多い事業所もあるので、こうした事業所が売り上げで工賃を上げるのは難しい」と指摘する。
三浦さんは「精神障害についてもっと理解してほしい。B型事業所にもまずは関心を持ってほしい」と願う。
B型事業所で作られた菓子など、気がつかないうちに手に取っているものもあるはず。まずは関心を持って、作り手たちの思いを受け取りたい。