ある日、東京駅の近くでやっていたイベントをのぞいてみたら、おしゃれなヘアゴムが目に入ってきた。デザインしているのは著名なデザイナーではなく、「B型事業所」というところの人らしい。聞いたことはあるがどんな場所なのか。利用している人や支える家族に話を聞いて取材した。

就労継続支援「B型事業所」ってどんな場所?

筆者が気になったハンドメイドのヘアゴムを作っていたのは、東京・荒川区にある就労継続支援B型事業所「studio753」。

B型事業所とは、障害のある人が仕事をしながら知識や能力を向上していく場所で、利用者と事業所の間には雇用契約がない。報酬は「給料」ではなく「工賃」として受け取る。一方、雇用契約を結ぶA型事業所は、最低賃金が「給料」として保障されている。

studio753は主に精神疾患を抱える人が通う事業所で、心理系の資格を持つ職員も支援をしている。その定員は20代〜60代の20人。仕事として、弁当やアクセサリーなどを作る。

自主製品の販売イベント「Good Plaza Tokyo」

調子が悪い日は失敗も そこから生まれた“ミータソース”

studio753のキッチンで作る弁当は1日10個ほど。コミュニケーションが苦手な人もいるが、自分でスーパーで買い物をし、弁当の販売で接客も担当する。

キッチン担当の職員・宇田川愛里さんは「本当に自立しなきゃいけないとき、絶対に役に立つんですよ。買い物や接客も就労支援につながるんです」と話す。

キッチン担当の宇田川愛里さん

気圧の変化などで調子が悪い日は、粉の分量や買う材料を間違ってしまうこともあるというが、そんな失敗から生まれたメニューもある。

ある利用者が豚ひき肉と間違えて買った合びき肉で“ミートソース”を作ってみたら好評で、そのレシピを考案した40代の男性利用者の名前をもじって“ミータソース”という名前のメニューが誕生したという。

少し緊張しながら話す考案者の男性が見せてくれたノートには、料理のメモがびっしり書かれていた。

“ミータソース”を作る利用者の男性

男性はstudio753に2年半ほど通っているが、将来については「ここにずっと通いたいけど、そのうち就職といいますか働くところを見つけなきゃいけないんで…」と言葉少なに話してくれた。