「鐘馗様がなくなるか、集落がなくなるか…」
3月10日。夏渡戸集落の祭り当日です。
この日も朝から鐘馗様の準備が続けられました。

区長の江花さんが描いていたのは、鐘馗様の顔。
怖く描いたほうが悪霊が入ってこない…昔からの言い伝えだそうです。
神職によって鐘馗様に“魂”を込める入魂式を行ったあと、担ぎ手が背負い、集落にある2つの鐘馗堂へと運ばれ、祭られました。

小さな集落で続く鐘馗様。
夏渡戸集落でも集落の田んぼをやめ稲わらが手に入らなくなった時に、鐘馗様作りをやめるかやめないかという危機があったそうです。
江花さんは「当時、よそからもらって続けようという話になり、鐘馗様を続けることになりました。その時その時で、岐路はあると思うんですよね。その時の世代の人たちがどういう判断をするかということだと思うんですよね…」と話します。

夏渡戸集落では5~6人ほど作り手がいれば、鐘馗様づくりを今後も続けていけるのではないか、と江花さんは話します。
それでも10年後、20年後どうなるか、まだわかりません。年に一度皆が集まって鐘馗様を作ることで、今後どうしていくか…“気持ちをひとつにする場”なのかもしれないと江花さんは考えています。

夏渡戸区長 江花一実さん(62)
「この夏渡戸集落は小さいですが、『鍾馗様がいる集落』と認識されているので、集落がある限りは鐘馗作りをやっているんじゃないかなと思います。そういう意味では、鐘馗様がなくなるか、集落がなくなるか…なんじゃないかなと思います」