鐘馗様を“作れなかった”集落も 進む『高齢過疎化』
阿賀町では近年、5つの集落で2月から3月にかけて鐘馗様を作って祭る「ショウキ祭り」が行われていました。2005年には新潟県の無形文化財に指定されています。しかし、年々鐘馗様を作ることができない集落が増えています。

今年は夏渡戸集落のほか、三川地域にある熊渡集落の2つしか作ることができませんでした。理由は急速に進む高齢化と過疎化です。
阿賀町は人口における65歳以上の高齢者の割合=高齢化率が51.5%(2023年現在)で、新潟で最も高齢化が進んでいる市町村となっています。さらに人口も20年前と比べると、5000人以上減っているのです。

今年、鐘馗様作りを“断念した”阿賀町上川地域にある武須沢入集落。
毎年2月第1日曜日に鐘馗様作りを行ってきました。しかし、今年は担い手が3人しかおらず、いずれも高齢のため断念したということです。
集落の入口には、去年作った鐘馗様が見守っていました。

実は武須沢入集落では出稼ぎで担い手不足となり、1960年代から70年代に12年ほど鐘馗様作りを中断していたことがあると言います。
それでも、「絶やしては申し訳ない」との思いから復活したそうです。
鐘馗様作りに携わってきた伊藤近さん(72)は「鐘馗様作りが集落の負担になっていた部分があった。だから正直なところ『肩の荷が下りた』という感覚の人もいるのではないか」と話します。
「残念だけど、仕方がない。来年は“最後”ということで鐘馗様作りをやれたら…」そう力を込めた伊藤さん。集落が紡いできた伝統が失われつつあります。